深読みが流行ってるらしい。
「前向きな諦観」の一言で自作を説明したDikePはやっぱ格好いい。
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- 発売日: 2007/11/22
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微笑む雨の街
ニコニコにシンフォニック・レインのプレイ動画が上がっていて、ついファルとトルタの結末を見てしまった。未プレイで視聴しているらしい物好きな人がけっこういて、悲鳴や怒号の飛び交う阿鼻叫喚のさま。
本当は著作権的に大問題なのだろうけれど、感情や疑問をリアルタイムで共有できるニコニコの仕組みに、シンフォニックレインは良く合っていたと思う。病室以降ぴたりとコメントが止む真トルタなんて、みんなの鼻水垂らして泣き腫らす顔が目にうかぶ。
どこまで行っても何か不幸なストーリー。何もかもハッピーな大団円は、僕らにはまだ少し早いのかも。彼らに永遠の安息を。
これは、私の翼だよ。高く、高く飛んでいくための
その片方を、クリスに預けるわ。一つの翼では飛んでいけないけど、二人ならどこまでも行けるように
少女に与えられたのは、ひとつ自由な翼。断じて神に背くこともできる自由。美しくて悲しいカット。
アル・・・・・・姉さん。許してくれるかな
うん、アルならきっとね。
許してくれるかな。彼女がずっと信じられなかったもの。否定し続けていたもの。CREDO。
嘘の上にも三年。石の上にも二千年。ごたくはともあれ面白い作品です。僕の知っている限り、最後まで読んでつまらなかったって言った人はいないんじゃないかな。最後まで読むのに数年かかったって人はいたけど。
こういうわけの分からない作品が美少女ADVとして現れる日本。本当にわけがわからん。しかも、それをみんなで見られるニコニコ動画。実に罪深い。深く悔悛し犠牲(お布施)を捧げると良いってチョコラータ食べながら言ってたな。
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僕のおすすめです。シンフォニックレイン。
理不尽な話
未だによく分からないのは、僕はなぜシンフォニック・レインがどうしてこんなに好きなのか。
例えばアイドルマスターが好きなのは動画の凄さの次元が違う、という割と明白な理由があるけれど、SRは別になあ。音楽は良いけどあれはストーリーと絡めて初めて本領を発揮する類のものだし、それ自体は声優の歌レベル、というか声優の歌だし。ストーリーもまあ・・・確かにびっくりするし、良く考えられてはいるけれど、あらすじにすると嘘つきたちが嘘の持って行き場を失ってみんなでうろたえる、という・・・
なんだか妙に身につまされるものがある作品だったんだよなあ。一体誰に感情移入してのそれだったのかがまず全く分からない。主人公のクリスでないことはたぶん確か。実際彼の徹底的な自己欺瞞の殻を突き破る読者はいないだろうし、というより突き破ろうというモチベーションがわかない。欺瞞自体が本質みたいなキャラクターなので。
まだファルシータなんかは萌えた。自分でお膳立てして自分でネタばらしする辺り、可愛さ余ってチュッチュチュッチュって感じ。名前に反して一番まっすぐなキャラクターなのが可笑しい。「私は幸せになりたいの」とかもうめちゃんこ可愛いですね。ちなみにフェリチタが幸せ。ファルシタとはちょっと違う。うん萌える。萌えるけど別に萌えキャラは他作品にもいっぱいいる。
リセルシアについては未だに分からない。さっぱり分からない。何がしたかったんだーと思う。当然感情移入以前の問題で、あーん? ホントは全部自分でやったんじゃないの? あのへんの一連の事件も計画の内じゃないの? ホントは手段を選ばない腹黒じゃないの? とかさえ思ったり思わなかったり。でも腹黒に仮定してもよく分からない。フォーニは「クリスに似てるんだよ!」って言ってたから、きっと彼の映し鏡なんだろうけど。確かにクリスは困った男だし。
トルティニタはまあ可愛い。文句なしに可愛い。こういう裏で何考えてるか分からない女の子に振り回されたいというのが僕の深層心理的欲求なのだろうか。いやいや。感情移入という意味では作中12を争うキャラなのも確か。だって裏面で主役張ってる。というか主人公はトルタなんですなあたぶん。んでラスボスはクリス。ええ、世界平和のためにレベル上げてたら自分が魔王だった! みたいな嫌なゲームですよシンフォニック・レイン。
んでアリエッタ。彼女の不憫さを考えると自然に(´;ω;`)な気分になりますね。そういう意味じゃやっぱり彼女に感情移入してるのかなあ。配置的に彼女、どう転んでも幸せにゃならんぽげ。だって『妖精の本』まで読み進めた人なら知ってるだろうけど、一見ぽややんな彼女の思考パターンはその実トルタと一緒、というか才能があるだけ甘えの効くトルタより、能なしなだけに達観してるニヒリストさんだから、妹を放置してクリスとチュッチュチュッチュとか自分が許さんのじゃないだろうか。というかそういう事態が訪れる可能性を信じてない気がする。可愛そうです。
最終的に提示される結末は、その可愛そうなアリエッタが妹を蹴落とすわけで、素直に読めばまあ・・・こんだけ苦労したんだしお疲れ様って感じ。逆に素直じゃない読み方をしたら僕が色々妄想してたアレになる。いやトルタならやりかねんデスよ、アルもほらあんな性格だから妹の努力にこっそり協力しかねんでしょう。実際アルの口から自分とクリスの関係を肯定する台詞は最後まで出てきてませんし。「仕方ないなあ」とかどうなんだ。良いだろいい加減自信持てよオメー。
フォーニさんとか毎回きっちりお別れ言っていくあたり泣かせますね。そのお別れの意味が分かる時はまあ手遅れなんですな。アイマスでかけだしPの頃にプロデュースしたアイドルたちとのお別れがもう取り戻せないのとちょっと似てる。次はもっと上手くやれるそんな気がするのよけどホントにしたいのはアイツをトップアイドルにしてやることだぜーもうできねーウドンやよいー戻ってきてくれー、みたいな。分からん人はアイマスしてください。泣かせます。
結局誰も自信がない、という世界に惹かれたのかもしれない。うろうろしてる連中の惨めさに自分を照らして興奮したのかも。うん、多分そうだ。みんな惨めで悲しい。そんで惨めじゃなくなった人はみんな旅だっていくんですな。だって惨めな主役と付き合う必要ないもんね。ほらギャルゲ-の主人公が何でみんなにモテるのか、あれみんな惨めだよね。読むの嫌になるくらいみんな惨め。惨めインテグラルでおろかでさみしい。そこんとこシンフォニック・レインは違う。クリスに飽きてみんな順番にどっか行く。これはすごいえらい。
ギャルゲーだけど月姫の主人公とかは逆にモテて当然な感じ。あれは異色だと思うな、ギャルゲ-のくせに(描写はともかく)主人公が超自信家。いざとなれば不都合はなんでもなかったことに出来るというとんでもない現実改変能力を局地的に意識的に展開できる。便利すぎ自信に実力が伴って最強に見える。ハーレムもできる。こういうお話は痛快愉快で楽しい。逆にFateは辛い。主人公がへなちょこすぎる。自然まわりにもへなちょこが集まる。へなちょこインテグラルが起こり気が狂ってしぬ。
そうそう、そういう意味ではギャルゲ-的主人公がどんどん追い込まれていくって姿に感激したのかも。無様でどうしようもないなあって思わせられる対象が自分でした、というのはある意味でカタルシス。みんなチャオチャオ言ってどっかいくぜー俺ひとりぼっち可愛そう。時は全てを連れて行くものらしい〜なのにどうして淋しさを置き忘れていくの〜。そうか僕はマゾか。マゾゲーか。シンフォニック・レインはマゾゲー。うそ。
実際、雨が止んだらハッピーエンドってわけでもない。どう転んでもどこか何かどうにもならないことはある。ただ、その結末を心から信じられる自信みたいなものを要求してくる作品なのは確かだった。さもないとみんな惨めでやりきれない。楽しくない。信じたくなーい!って、一人は現実から目をそらし、一人は目を閉じたまま、一人は偽りにすがろうとしているので、そいつらにまだマシな現実をくれてやるのは読者に委ねられた仕事。変なゲーム。
おへんじ
ちょっと、おかしいじゃないですかhajiCさん。
こちらは、ほんのちょっと前まで熱烈な
「シンフォニック=レイン」のファンサイトだったじゃないですか。
それを、それをまるで断絶した過去のように、現在と未来のプレイヤーを突き放すような
エントリーをお書きになって…。
http://d.hatena.ne.jp/hajic/20080419/p4#c
(^ω^)こんにちは。僕もまだまだダメですね、
読者には誤読する権利がある、って言葉を思い出しました。
シンフォニック=レインは酷い話です
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僕が全力でプッシュする作品の一つ、シンフォニックレイン。
今回はそのED曲の紹介を通して、本作が静かに湛える雰囲気を伝えようと思います。
歌い手は岡崎律子。本作は図らずも、彼女の遺作となりました。
シンフォニックレインは酷い話です。
恐らく、この美しい曲を聴いた全ての人がそれを予感するでしょう。
そして、間違ってはいません。これは酷くつらい、悲しい話です。
その事実に、どのような意味づけをするかは、読者に任されることになります。
涙がほおを流れても
http://www.nicovideo.jp/watch/sm725763
シンフォニックレインのED曲。
本作を生み出した人々が、この作品の孕む問いに与えた答え。
OPにおいてあやふやに語られる希望、その具体についての明確な提示。
それが希望と言えるのかどうか、人により意見は分かれるでしょう。
僕は、これを希望だと考えます。むしろ、他に手はないと。
空の向こうに
http://www.nicovideo.jp/watch/sm16735
唐突なオーケストラヒットから始まるシンフォニックレインOP曲。
ED曲「涙がほおを流れても」と裏表を成す主題提示部分であり、
作品が折り返しに入る「彼女の物語」冒頭でこれが鳴り響く時
この歌に隠された意味に、読者は世界が裏返る程の激しい衝撃を受けることになります。
同じ歌詞、同じメロディ。それが全く別の意味や姿を見せる。
この体験は本作を味わった人だけが得られるスリルとなるでしょう。
いつかこの胸に降り注ぐ光はあると思う?
おたく神学 三位一体と美少女ゲーム
中世哲学への招待―「ヨーロッパ的思考」のはじまりを知るために (平凡社新書)
- 作者: 八木雄二
- 出版社/メーカー: 平凡社
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三位一体説とは「神である父とキリスト、そして彼ら二人に共通する”想い”である聖霊の三者は、別の人格(ペルソナ)でありながら、神という同一の一者である」というキリスト教神学の根本概念であり、381年ニケア・コンスタンティノープル会議において成立した。
父である神は人が楽園で犯した罪(原罪)により人との対話を放棄したが、分身であるキリストを人間として人の中に立たせ、その処刑を通して人との一対一の関係を修復(原罪を払拭)する。この点でキリストはキリスト教において救世主なのであり、新約聖書は「いかに人は生まれ持った原罪の罪を許されたか」について語る物語である。
キリスト教の抱えるこうした「人知を越えた」教義(それほど多くない)は、玄義、奥義、あるいはMISTERYと呼ばれ、本質的に人間理性の限界を超えた存在であるゆえに、神が存在することと同様のレベルでキリスト教徒が信ずるべき概念であるとされるものの、教会博士トマス・アクィナスの「思考を通した信仰」という言葉が端的に示すように、こうした概念への理論的挑戦(時に批判的な)がキリスト教哲学、すなわち中世哲学の主体であり、現代哲学の母体とさえなった。*1
さてヨハネス・ドゥンスは聖三位一体を構成する父・子・聖霊について「記憶・理解・愛」と解釈する。つまり、断絶されて手の届かない過去、それに光を当てる知識と思考、そしてそれらから生まれる言いようのない感慨として三位一体を説明するのである。また同様に、永遠に生きる神と人は別の時間に立つわけではなく、方や永遠の中の一瞬、方や有限の中の一瞬において常に向き合うものだとして人間の自由意志を掲げ、神の円環的時間観が必然的に持つ宿命論を排斥した。
この解釈は明快なだけでなく、特に現代日本のおたく界隈に生きる僕らにとっては理解しやすいのではないだろうか。永遠と今を扱うテーマは数多の美少女メディアの持つ主題であったし、それらが恋愛要素を基軸とする作品群、しばしば18禁の作品に見られたことは極めて暗示的である。つまり、「なぜエロゲーにはエロが必要なのか」の一つの答えとして、エロゲーは原罪としての生殖(恋愛)の罪、それが生む悲劇と救済のシークエンスとして、現代に再現された三位一体の物語群だったと解釈してみるのも面白い。
何にせよ、秘められ忘れ去られた過去をつまびらかにし、その悲劇の抱擁を通して真実に辿り着くことは、一種独特の感慨を生む。良きサスペンスや推理小説の読後の深い余韻に浸ったことのある人は多いだろう。この感慨こそ真実の喜びの一端であり、キリスト教神学2000年の歴史を支えた喜びであるといっても過言ではあるまい。事実、それら作品のことを、僕らは今でもミステリーと呼ぶ。
参照:
http://d.hatena.ne.jp/hajic/searchdiary?word=%2a%5b%a4%aa%a4%bf%bf%c0%5d
(おたく神学一覧)
http://d.hatena.ne.jp/hajic/20050708/p1
(聖三位一体)
参考作品:
君が望む永遠 Latest Edition 初回版(PC R18)
Kanon ~Standard Edition~(PC R18)
工画堂スタジオ シンフォニック=レイン 普及版(PC)
スキップ (新潮文庫)(文庫)
*1:にもかかわらず「哲学は神学の婢女」という悪意ある言葉が今も生きていることは、いかに近代が中世を効果的かつ念入りに葬ったかの良い見本であろう
『シンフォニック・レイン』への誘い
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どうしようもない事実が最初にあって、いくら考えても既に手遅れ。
なのにその時、ある奇跡が起こる。でも、それを信じられる? という話です。
「涙がほおを流れてもpiano」を聞いていたらちょっとホロリとしたので今さら推薦。