BRUTTA BELLA LINGUACCIA ITALIANA

はじめてのイタリア卑語
卑語のことをparolaccia(パロラッチャ)と言います。見知らぬ人や目上の人や立派なご両親の前などでは使ってはいけない言葉ですが、イタリア人がそんなことを気にするわけもなく、chi se ne fregaと五分に一度はかならず口にするのが実情です。
例えば、ミラノなどを筆頭に北部大都市住民はイタリア南部の住民のことを「土人ども(terrone、テッローネ)」と呼び、一方ナポリシチリアなどの南部人は北部人を「ポレンタ*1喰いの抜け作(polentone、ポレントーネ)」と名付けています。
これら多彩な悪口の発明は、ひとえにイタリア人の「自分の家族が一番的思考が生み出す他人の住処を貶す傾向」が行き着いたところに違いないと思いますが、ともかく、今日はイタリアの悪口を紹介するという後ろ向きな行為に励んでみようと思います。むやみに暑くて外に出かける気にならないのです。che palle.


1)状況に対する悪口
悪口とひと言に言っても、状況に対する悪口と、人間に対する悪口が存在します。日本語では状況に対する悪口というものはそれほど存在しないようですが、イタリア語において代表的なものがいわゆるポルカシリーズです。

porca eva ポルカエーバ (エヴァの雌豚め)
porca miseria ポルカミゼーリア (哀れな雌豚め)
porca vacca ポルカバーッカ (雌豚の雌牛め)
porca troia ポルカトロイア (雌豚の売春婦め)
porca puttana ポルカプッターナ (同上)
porca mignotta ポルカミニョッタ (同上)

これらは自分にとって状況が好ましくないと感じた時に間投詞的に使用される言葉で、特定の相手を指して使われるわけではないことに注意です。
例えば列車を乗り逃がした際などに使用します。かがみ風に言えば「あー、もうっ」とかそんな感じです。連発されます。ほかにも

cavolo カーボロ(キャベツ)
cazzo カッツォ(ちんこ)
merda メルダ (うんこ)
che palle ケパッレ (なんというキンタマ
sta minchia スタミンキア (コイッ ちんこ)
mannaggia マンナッチャ (もう!)
mannaggia a buba' マンナッチャアブバー(あーっ、もう!)

などなど様々。気ままに口走ってみてください。
例)
マリオ「ミーンキア! ヨッシーが死んじゃった」
ルイージ「ポールカッミゼーリア」


2)人に対する悪口
悪口と言って普通に僕らが思い浮かべるのがこちらでしょう。使い所を誤ると喧嘩になるので気をつけないといけません。イタリア人はしばしば兵役を経験しているので殴られると痛そうです。逃げましょう。喧嘩の最強奥義は中距離走だと聞きます。

pazzo パッツォ (気違い) 比較的愛嬌のある悪口です。あいつはイカレてる、とかそんな感じ。
matto マット (気違い) 状況によりますが本気であいつはおかしい、みたいなニュアンスを持ちます。
stronzo ストロンツォ (ろくでなし) 真面目な話題に登場すれば純粋な悪口です。あいつは嫌いだ的ニュアンスを含みます。
coglione コリオーネ (キンタマ) あいつはつまらん奴でアホで抜け作、とかそんなイメージです。
rincoglionito リンコリオニート (痴呆症の) ボケボケでどうにもならん、とかそんな感じ。
pirla ピルラ (ちんこ) これもマヌケとかアホとかそんな感じ。
vaffanculo バッファンクーロ (クソ喰らえ) 普段は冗談ですが怒号としても飛び交います。
futtitinni フォッティティ (意味不明) 南部の連中がよく使います。

少々上でも書きましたが、これらの悪口はみな軽口として盛んに口に上ります。面と向かって友人に言われても逆上して殴りかかってはいけません。
特に南部の連中は挨拶替わりに「come cazzo stai?(やいチンコ野郎元気かい)」と聞いてきますから真面目になるだけ疲れるだけです。こっちも「cazzo bene(チンコ元気です)」とかなんとか言い返しておけば良いでしょう。


3)実践的語彙
これらのコンビネーションで様々な状況に対応します。例えばpezzo di merdaであれば「うんこの切れはし」ですからうんこより酷いことを意味します。あるいはfigura di merdaは「うんこの姿」ですからあいつはクソ野郎だ、あるいはこの状況はクソだぜ、的な意味になるでしょう。
実際の所、究極的には「ポルカなんとか」をどんどん発明してしまえば良いわけで、難しいことは何もありません。

rompicoglione ロンピコリオーネ(きんたま潰し) 鬱陶しい奴、鬱陶しい状況
rompipalle ロンピパッレ(同上) 同上
spaccapalle スパッカパッレ (同上) 同上
testa di cazzo/cavolo テスタディカッツォ/カーボロ(亀頭/キャベツ頭) まぬけ
super mega minchia cazzo di merda...... スーペルメガミンキアカッツォディメルダ(意味不明)

とにかく山ほどあることは理解してもらえたのではないかと思います。この際以前の記事(リンク)も参照して楽しいイタリア卑語ライフを体感してください。イタリア旅行が18倍楽しくなります。
ただし、使い所は弁えるようにしないとただのPAZZOでMALEDUCATOだと思われますからご注意を。イタリア人は日本人に輪をかけて裏表の激しい民族です。MODERAZIONEを心がけて、楽しい卑語ライフを。


参照: 以前の悪口に関する記事
Gamma Porca http://d.hatena.ne.jp/hajic/20070205/1170636533
Linea Cazzo http://d.hatena.ne.jp/hajic/20070205/1170638448
Testa di Cavolo http://d.hatena.ne.jp/hajic/20070205/1170641743

*1:トウモロコシの粉をせっせとまぜまぜして作る日常食。北部農民の一般的な食料だった。あまり美味しいものではない。