もしツーリング中にキャンプするならどこへ泊まりますか

hajic2004-10-17

河原と答える人は釣り好きか変態か素人だろう。よほど清流まで遡らない限り虫がやたらに多いし、露営場所に砂地を選んで無闇に砂まみれになるか、さもなければ地面がごつごつして寝づらいかのどちらかである。山中と答える人はマタギの子孫か何かに違いない。夜は死にそうなほど寂しい上に、水くみ買い出し等が非常に不便。何より時折怪奇体験談も聞かないこともないロケーションには熟練キャンパーでさえ躊躇う。キャンプ場と答える人は常識人である。きれいに管理された芝生、雨水の溜まらないテントサイト、トイレに炊事場。キャンプ場はキャンプのための施設なので、当然快適にキャンプが可能だ。しかしツーリングライダーはしばしば常識人ではないので、しばしば道の駅に泊まる。
道の駅とはご存じ国道沿いに点在する公営休憩施設であり、例えるなら一般道版サービスエリアである。しかしこの道の駅、実は(SAがキャンプに向くのと同様に)非常にキャンプしやすい施設だという事は意外と知られていない。というのも通常道の駅は駐車場の他に、レストランや地元産品売り場兼土産物屋等数軒の商店と、付近の道路・観光案内所、加えてトイレと数個のベンチで構成されているのだが、現在のところ多くの道の駅において午後6時前後にはそれら商店がまとめて店じまいするため、基本的にその後道の駅は朝まで無人である。もちろんトイレを利用するためなどの理由で立ち寄る利用客もいるにはいるが、昼間ほどの賑やかさは全くない。ここで大事なポイントは、道の駅の施設はトイレを含めて「夜間でも利用可能」だと言うことである。
つまりお店が閉まり、人が去った後の道の駅に残されるものは、ただ広い駐車場だけではない。トイレ(及び水道)やベンチ、屋根付きのテラス、街灯といった一連の施設は、閉店後の道の駅を露営するのに持ってこいのポイントにする。加えて場合によれば芝生の広場や四阿すらあるし、まず間違いなく設置されているジュースの自動販売機は夏場非常に重宝だ。明るい街灯の下、ベンチに座ってのんびり夜食を作り、広いテーブルでゆったり食事した後は、環境汚染の心配もなく豊富な水で食器一式を洗える。国道に面しているから食料等の買い出しに行くのも容易だし、ツーリング行程のルートに組み入れ易いから時間のロスも少ない。この最後のポイントは意外と重要で、長距離を移動するツーリングの場合、いちいちキャンプサイトを探す手間が省けるのと、翌日の目的地方面への出発がスムーズなのとで、道の駅泊は精神安定の面からもかなり魅力的だ。
さらに、道の駅がその真価を発揮するのは雨の日である。嵐であろうが台風であろうが、家に帰らない限り旅人はどこかで夜を明かさなければならない。しかし雨中の露営というものは、設営はともかく撤収が嫌になるほど辛い。つまり自動車のオートキャンプであればすべて適当に後部座席に投げ込めば済むが、バイクの場合用具一式からテントまできれいに整頓して荷物に押し込む必要があるのだ。ああ考えるだけでもうんざりする。絶対したくない。そんな私でも、道の駅に泊まれば雨中の撤収という地獄から解放される。要は屋根の下にテントを張らせて貰うのである。コンクリの地面が少々固くとも濡れるよりはマシだ。翌朝は屋根の下で荷物一式をまとめ、雨具をつけてから、ゆったりバイクに向かえばよろしい。もちろん雨は憂鬱だが、それでも雨の中テントを畳むよりは良い。
かように素晴らしい道の駅だが、やはり問題もある。国道に面しているという点は、大きなメリットであるのと同時に大きなデメリットでもあるのだ。というのも国道には多くのトラック類が走行しているが、彼らドライバーが睡眠のために道の駅を利用する場合、ほぼ例外なくアイドル状態で停車し続ける。夜に響くトラックのアイドル音というのはすさまじいものがあり、50メートル以内ではまず安眠は不可能と考えて良い。キャンプツーリングはそれなりにハードな旅なので、夜ぐっすり寝られないというのは想像以上に致命的だ。後々ジャブのように効いてくる。主要国道沿いの道の駅は極力選ばない、選ばざるを得ない時は極力駐車場から離れたところにテントを張ることを心がけること。
また、こういった大きな施設には、地元の暴走族が溜まることも多い。いくら直接の被害はなくとも、トラックのアイドル音同様、夜遅くまで寝られないという事態が発生しかねない(とはいえ引き上げてくれるだけトラックよりはマシなのだが)。何にしても、全般的に道の駅は安眠するには不向きな傾向があるのは確かなので、じっくりと寝たい時はおとなしくキャンプ場を探すのが上策だろう。キャンプ場であればお昼過ぎからでも平気でテントが張れるし、昼過ぎまで寝ていても気兼ねしなくて良い(無料サイトならば)。道の駅は遅くとも9時までには寝床を畳まないといけないし、場所によっては7時頃から朝市が始まることもある。正直なところ、道の駅泊は何かと忙しない。
とはいえ、全体的に見て道の駅が優秀な旅の中継点であることは事実。全国ほぼどこにでも満遍なく存在し、国道沿いでアクセスもよく、掲示が出ているので見落とすこともない。もしそこが気に入らなくとも、あと2〜30キロも走れば次の道の駅がある。他の旅人と話すこともできるし、運が良ければ地元のおばさんから野菜を貰ったりもする。道の駅には道の駅なりの魅力があるのだ。天気が良い日は早めに移動を切り上げてキャンプサイト探し、いまいちな日は道の駅…等々、キャンプ場と道の駅を有効に使い分けることが、快適なロングツーリングの秘訣だと思うのだがちょっと長くなりすぎたなあ。