涼宮ハルヒの憂鬱 感想

俺はここ数日でかなり面白い目にあってたんだ。お前は知らないだろうけど、色んな奴らが実はお前を気にしている。世界はお前を中心に動いていたと言ってもいい。みんな、お前を特別な存在だと考えていて、実際そのように行動してた。お前が知らないだけで、世界は確実に面白い方向に進んでいたんだよ

ハルヒという小説は「チープ」とか「ベタ過ぎる」とか色々言われていますし、実際いかにもありがちなラノベ的要素で構成され、もはや死滅寸前級の少年誌的結末に辿り着きます、それはもうベタベタな。けれど、僕はこの主張がある限り、本作をそんな風に切り捨てるべきだとは思いません。

涼宮ハルヒの憂鬱』は、ケレンみたっぷりに色んな仕掛けをこらしながら、それを一人称の語り手に示し、そして「たいていのことは信じてしまえる性格を獲得」した彼が、ついに自らそれを証明するに及んで、あんなに大風呂敷だった物語は、見事に平凡に落着し、幸せな結末を迎えるわけです。

ハルヒの世界は彼女の無意識のうちに彼女にとって望ましい方向へと変成されていくものの、そのことは彼女の意識レベルにおいては必ずしも常に好ましい状況を彼女に提供するわけではない。けれど彼女が憂鬱だったとしても、彼女が知らないだけで、彼女の世界はいつも面白さに溢れている。

つまり、どういうことなのか。答えは明快です。ごまかし抜きで、こんなポジティブなメッセージを真っ向贈ってくれる創作はなかなかありません。なんてベタなんだ。ベタすぎるぜ。そんなアホっぽい展開はまあなかなか認められないでしょう。けれど、それでも僕は言います。これはとても良いラノベですね。