化物語3〜5話 まよいマイマイと猫の忠信

 「その一人娘と言うのが、わたしです」


 


 これは面白い。ささやかな傑作エピソードだ。謎の少女八九時真宵を中心に据えて展開されたスラップスティックは、彼女の大口上を持ってちょっと悲しい真相と、その解決に辿り着く。物の怪が滔々と身の上を語るクライマックスは落語の『猫の忠信』を彷彿とさせ、大いに魅せる構成だが、主人公が美人の後家さんポジション(猫の忠信ではヒロインだ)というのが苦笑を誘う。


 切ないんですな。落語は基本的にシチュエーションがまず救われない。骨に酒をかけたらお礼に来ただの、知恵遅れが豪邸の新築祝いに行くだの、気違いじみた長さの名前を付けられた子供がおぼれて死ぬだの、芸者の幽霊が線香一本の間だけ三味線を弾くだの。底流にはシニカルな現実観が溢れてる。それをどう調理して泣き笑いに持ち込むかが演者の腕なわけですが。


 近頃人気のラノベが(と言ってもハルヒとか戯れ言くらいしか知らないけれど)妙に斜に構えた態度を見せていて、時に中二病だと揶揄されたりもするけれど、やはり人気であるその理由は、やっぱり僕らは割と現実をシニカルに見たがる文化に生きているんじゃないかしらん。ただ、涙に泣き濡れて生きるほど真面目な文化でもないので、何でも面白くしたくなる。どうせ泣くなら笑って泣きたい。


 「表の革は父の皮、裏の革は母の皮・・・」と告白する猫の姿に、聴衆は同情を感じながら喝采を贈るはず。確かに猫は少々悪いことをしたけれども、まあ親の形見を捜してずっとさ迷ってたなんて泣かせる話だし、何よりこいつも気の毒だ。とにかく巡り会えて良かった良かった・・・と言うところで、人間側にも(非常にどうでも良い)オチがつく。ぐたぐたになって一巻の終わり。必見。