佐倉統『遺伝子vsミーム』廣済堂出版、2001

生命とはつまり情報体である遺伝子が自分の複製を作るための道具であるという視点に立つと、生命とは自己進化する情報であるとも言える。親から子、そしてまたその子へと遺伝情報は突然変異と自然選択による進化を繰り返しながら受け継がれてきた膨大な情報なのだ。とすると、親から子、子から子、または友達、といったように受け継がれながら、どんどん自己の複製を作り、また変化を起こす文化という情報もまた進化論の視点から考える、すなわち科学的な視点から考えることができるのではなかろうか。
この文化情報の単位がミームであり、生命情報の単位である遺伝子と対をなす。SEXと避妊の例でよくわかることだが、遺伝子は生命情報の維持を目的とするがミームは文化情報の維持を目的とする故に対立することもある。人間が生命体としての快楽を追求した結果の環境破壊、そしてそれに対する環境保護活動などもこの例である。一方、遺伝子的にはほとんど違いがないにもかかわらず、文化的な…すなわちミーム的な…違いによって発生する人種差別等の問題もある。この問題においては、生命維持を図ろうとする遺伝子と仲間以外を敵にしてしまおうとするミームがタッグを組み、悪い方向へ作用していると言える。
このように現代世界に存在する様々な問題の多くは遺伝子とミームに関した問題だと言えよう。我々はその二つを「よき」絆で結ぶべく、ミーム学を取り込んだ教育の道を模索するべきではないだろうか。


むちゃくちゃ面白い。まさに目から鱗。「神は心のウイルスである」の下りに至ってはうっかり感動してしまいそう。さらにコンピュータとインターネットは図書館以来のミームプールの革命であり、文化情報の外部記憶装置の超巨大化を意味していて、これはまさに文化情報単位ミームにとっての「原初の海」である…などともう話はとどまるところを知らない。まあ、ロマンチックすぎるという批判はあるかもしれないのだけれど。