syndrome: embrace that sky

 有線から流れるオレンジ・ミステリーに僕一人空回りしたのは先日京都百万遍に開催されたニコマスポータル近畿ヘッドクオーター親睦会議アルコール摂取分会であった。「何それ」という向きには以下の動画を見ていただきたい。2番目の曲である。損はしない。メチャ格好いい。格好よすぎてうっかり友人から電子ドラムを奪い取ったのは今考えても非道な過ち。



 このOPに限らず、きまぐれオレンジ☆ロードというアニメはやたらと先進的で、かつての日本アニメの総括的な気配を漂わせていた。映像技術の面でもそうだし、脚本の面でもそう。具体については↑で体験してもらうとして(百聞は一見にしかず)、結局80年代に猖獗を極めたラブコメトライアングルを完成させ、頼まれもしないのに終止符を打ったのがこのアニメである。

 ジャンプ連載の漫画を原作とした本シリーズは、平たく言わなくてもラブコメ、つまり煮え切らない本命とアッピル過剰な当て馬の間で良い目を見続ける優柔不断な主人公の物語で、事実原作は最後までだいたいそんな感じだったのだが、アニメはちょっと違った。悪名高い劇場版第一作『あの日に帰りたい』において三角関係は至極まっとうに、エゴイスティックに解消される。*1

 あんまりにもあんまりだったので大きなお友だちに(wikiによれば原作者にも)散々貶されて黒歴史にされ、今だDVDになっていないとか何とか不遇をかこっているけれど、春日くんたちをネバーランドに置き去りにしなかった関係者の判断は高く評価されるべきだと信じている。事実、その後新シリーズとして再出発した同作品の描いた夢は、大不況の現実の前に儚く消え去った。

 2001年になって『君が望む永遠』が最高の評価を得ている通り、彼らは10年少し時代を先取りし過ぎたのかもしれない。バブル絶頂期に展開し、その崩壊にあわせて幕を閉じた本作は、この文脈に立っても80年代を総括した。以後等身大の少年少女による"ふつうの"恋愛アニメは姿を消し、浪漫主義に耽溺した恋愛エロゲも君望あたりで自滅する。*2

 良くも悪くも旧世紀の2次元圏文化を断絶した作品であることは間違いない。あんまり見事に断ち切られたおかげで、自作の尻ぬぐいを自分で行える作品はその後長く登場しなかったし、もしかするとまだ現れていない可能性さえある。世紀が変わって現在、夢と希望の2.5次元に盛んに歓声を送るアイマス界隈においても、うっかりすると『GAME』みたいな作品が出てくるあたり、症状は重篤だと言うほかない。



要約:
酒屋でくだを巻いてたら後ろからいきなりid:taitokuPがきまぐれオレンジ☆ロードの曲でMADを作ってくれるってidコールくれたよω

*1:美希を覚醒させておいて千早と海外に行くみたいな話だと思って貰ったらだいたい間違いない。

*2:良い意味で、というか来るべきして来た結末という意味で。さんざん作品世界に上空飛翔的メタ視点(いわゆる神の視点)を持ち込んで満足に浸った結果が、それを観察する現実の読者自身さえもメタ的に眺める身も蓋もない視点を一般化してしまったのは皮肉。