冬にお勧めシンフォニックレイン

 美少女ゲームには季節ものというジャンルがあります。春夏秋冬、それぞれの季節をモチーフにした作品のことですね。聴いたことがない? じゃあ今作りました。


D.C.Dream X'mas ~ダ・カーポ~ドリームクリスマス 初回特典版

D.C.Dream X'mas ~ダ・カーポ~ドリームクリスマス 初回特典版


 春で有名な作品といえばもう『D.C.』でしょう。え、初音島は年中桜が咲いているだけ? 瀬戸内のマリネラってことで年中春としていいことにしましょう。うん、あの作品も色々ありましたね。人ごととは思えません。で、今Amazonに見に行ったら噂通りシリーズがうじゃうじゃ並んでてわけがわからないので一番上のを取ってきましたがこれ冬バージョンって書いてある。この記事は早くもぐだぐだですね!


AIR ~Standard Edition~

AIR ~Standard Edition~


 夏の作品は傑作目白押しなのですが、あえて一つ選ぶならこれ、『AIR』を挙げます。だってあの「何もせずにひとりぼっちで過ごした夏休み」みたいな空しさはちょっと他で体験できるものではない。最後まで遊んだ人が口を揃えて「これは傑作だ、しかしもう結構」みたいなコメントを残すゲームも珍しい。あの不思議な夏の気配をアニメ化に成功したってだけで京都アニメーションは歴史的な偉業を成し遂げたと言えます。


Canvas ~セピア色のモチーフ~ DVD版

Canvas ~セピア色のモチーフ~ DVD版


 秋は僕の好みで『CANVAS』を。女の子達と触れ合って自分を取り戻す18禁恋愛SLGです。いや僕が言ったんじゃなくてAmazonにそう書いてある。妙なコピーはともかくF&C製とは思えないくらい奇跡的に良くできたシナリオを持つソフトで、主人公の過去をキーワードに、だいたいのところで全部のストーリーがうまく結びつきます。パステル可愛い絵のくせに、中身は打ち切りを食らわなかった可能世界の『水月』くらいの完成度。


Kanon ~Standard Edition~

Kanon ~Standard Edition~


 そして冬です。『White Album』『天使のいない12月』等々、夏と同じく傑作揃いのシーズンですが、やはりここは間違いなく『KANON』を挙げなくてはなりません。KEY作品の代名詞、収斂していく平行世界の金字塔麻枝さんのポエジーと読者理解が高度にバランスしたこと自体が奇跡の一品。

 で、そんな『KANON』に不満を感じたことがある人、いませんか? 不幸な連中ばっか、この街なんか呪われてんじゃね? 女の子揃って頭おかしいような。ちょ、お前そこ生き返ってくんなよ、うぐぅじゃねえだろ・・・。呟いた人いるでしょう。

 はい、そんな人にお勧めしちゃうのがこの、シンフォニック=レインです!


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 みんな楽しそうですね! きっと明るく朗らかなゲームなんですね!

あらすじ

クリス君は故郷に恋人のアルがいるというのに新しい彼女捜しを始めた!
ツンデレのトルタや美人生徒会長や萌え萌え下級生やアーシノがクリスに迫る。


 2004年の春に光画堂から発売された、全年齢向け美少女系PCゲーム。やたら地味な作品で、あんまし売れませんでした。パッケージまで地味。


工画堂スタジオ シンフォニック=レイン 普及版

工画堂スタジオ シンフォニック=レイン 普及版


 実のところ、美少女ゲームというジャンル区分からして嘘くさい虚偽まみれのミステリで、雨の降り続く街を舞台に交錯する少年少女たちの思惑を通して人の相互理解不能性について実体験する素敵な作品です。

 本編から若干、抜粋してみましょう。


           ☆          ☆


 


 冬の日差しは、強くもなく、弱くもなかった。
 窓辺に置いてある鉢植えから、ローズマリーの香りが風に乗って漂ってくる。
 そんな陽気な午後のひとときを、クリスからの手紙で過ごしている。


 


 本当に綺麗な、青い空だった。
 この空は繋がっているはずなのに、クリスの元では、雨が降り続いているという。
 信じられないような話だったけど、それは真実だった。


 


 だから私は、その日が来るのが怖いのだ。
 ——雨が降り続けば良いのに。嘘が本当になってしまえば。
 この世界が、私のついた嘘のように、優しくなってしまえば良いのに。


           ☆          ☆


 ぜんぜん朗らかじゃねえ! しかも、湿っぽいのか乾いてるのかわかんねえ!


 待降節、クリスマスを待つ四週間から始まって、新年1月の末、渇ききった冬の、何でもないある朝に終わる物語。雨が降っているのかいないのか、よくわからない街の出来事です。

 肝心の内容はと言えば、ちょっと切ない三角関係もの。泣かせる基本に忠実な筋書きで、好感が持てます。心地よい哀しさに浸りたい人には間違いなく向いてます。


 声優陣も中原麻衣笠原弘子浅野真澄折笠富美子とえり抜きの実力派揃い。

 あと、岡崎律子さんの楽曲を聞いたことがあって、それが好きだって人は多いでしょう。このゲームの使用曲は全曲彼女の歌で、つまり、その意味では彼女の歌を多重的に編成したリリカルオペラですから、岡崎さんのファンなら絶対気に入るはず。



 岡崎律子さん作、『シンフォニック=レイン』の使用曲。『空の向こうに』『I'm Always Close to You』『秘密』『涙がほおを流れても』のピアノメドレーです。

 シーンを思い出すだけでちょっと涙腺が緩むのは、僕がいよいよおっさんになってしまったからかもしれません・・・。

 

For RITZ

For RITZ


 というわけで、冬休みにお勧めの一本、シンフォニックレインを紹介してみました。はじめてのCが全力でプッシュする、オールタイムベストです。値段も安い。

 良かったら、上のプレーヤーで曲だけでも聴いてみてください。たぶん気に入ると思います。そしてもし遊んで貰えたら、一緒にあの結末についてお話しましょう。

 心をこめて、心から!