曇り鏡

ラッキーちゃんねるへのインターフェイスとして、またオタクのイコンとして、視聴者の希望と投影を一身に受けるこなた。キャラクター造形自体が萌えキャラなので出しゃばらなくても萌えるつかさとみゆき。現在一人微妙な立場にいるのがかがみである。


ロングのツインテール。常識では考えられない髪型に象徴されるように、彼女は一般人ではありえない。実際、「有り得ないオタク像」を仮定し冷笑し安堵するおたく、という嫌にリアルな立場であった時の彼女は、あんなに輝いていた。

一般おたくの鏡としてそのせせこましいアイデンティティに安定を与えていた彼女も、仮面おたく的側面が隠蔽された結果、その投影的役目を喪失。彼女がカバーしていた視聴者はこなたに統合されるか、さもなくば突き放されることになる。

かつてらき☆すたには二人の主人公がいた。一人は存在しない幸せなオタク世界の住人、マドンナとしてのこなた。そしてもう一人、オタクと一般の間で揺れる微妙な存在としての視聴者の依り代、かがみ。

今かがみはその能力を失い、従ってつかさやみゆき同様、二次元的添え物としてのキャストの座を狙いつつあるかのように見える。

しかし、その中途半端な本質は彼女を容易に萌えキャラにもさせず、ツッコミ役にまわってみても寒い。かといって視聴者を身の内に投影する力もない以上、彼女の立ち位置はきわめて微妙と言うほかはない。

実際の所、微妙さ、それがかがみの魅力だった。単独ではどこにも身の置き場所のない存在。何かを映し、語るが、それ自体は何ものでもない。けれど、だからこそ不特定多数の視聴者を惹き付けた。世界へのクリアな窓だった。

彼女は普通に仮面おたくをしていればいいのだ。ツッコミも萌えもいらない。身も蓋もない萌えキャラは既にいるし、そもそも彼女自身がツッコミどころの塊だ。だが、それがいい