アイドルマスター『ココロ』になつかしいものを見た

 
 「やよいって何かおかしいよね」と、よくid:sikii_jさんと飲みながら話すのだけれど、バックグラウンドを全て排除した時、彼女は最もインパクトのあるヒロインの一人だと思う。実際しーなPの『キラメキラリ』とか、永井先生アイマス実況あたりでこの世界に足を踏み入れた人、多いんじゃなかろうか。

 ニコマスがストーリーと結びついて魅力を増すジャンルだってことは一種の常識で、だからこそ互いに知識を共有するファン層の結びつきは強固になる反面、それは良くも悪くも新規の参入障壁になっていたり、内向きだと批判される原因だったりもする。説明されないと分からないというのは、やっぱり弱点だ。

 わかむらPのMADがホイホイと視聴数を稼ぐのは、結局そういう説明をぶっちぎる魅力、理屈抜きの迫力がベースにあるからで、コアなニコマスファンだけに通じる文脈で作られたMADは、やっぱり2〜3万人の視聴者にしかアッピルしない(2万3万は実際すごいことだが)。

 今、ニコマスの文脈をざっくり切り捨てた演出は凄く新鮮で、同時にとても懐かしく感じる。リンだから亜美だろうとか、メカなら千早だろうとか、予断を一切裏切って主役を張るのはやよい。歌って踊る奇跡のポリゴンの黄金の鉄の塊は、視聴者に理屈抜きのパンチを食らわせる。可愛さインテグラルの衝撃。

 たぶんニコマスファンの誰もが、一度はガツンとやられたことがあるはず。初めて『PSPS』を、『蒼い鳥ACM』を、『キラメキラリ』を見た時の衝撃を忘れない。あそこに理屈はなかった。満足げにニヤニヤする敷居さんの家で朝まで興奮して、眠いから帰れと言われて、帰宅直後にプレミア会員登録した。

 2ジャンル交流企画の一翼を担っている事実はあるにしても、『ココロ』に付けられているコメントは、普段見慣れたそれとはちょっと毛色が違う。「アイマスMAD」って言葉が「ニコマス」に置き換わる前の匂い。何だかほのぼのしていて、自慢げで、仲良しで、うきうきしていて・・・。

 本作は今後のニコマスの方向性を探る上の、一つのヒントになるかもしれない。「最近視聴数伸びないよね」という話はあちこちから耳にするし、「ファンが真面目に視聴してくれない」ってぼやきも聞く。見る専の僕が言うのはおこがましいにしても、もしニコマスが袋小路に入りつつあるのなら、原点に立ち返ることは無駄じゃない、かも。