ダヴィンチコード』の映画化が問題になっている模様。曰く「キリストの隠し子の存在をカトリック教会は手段を問わず隠し続けてきたんだよ」という内容があまりに扇動的であるし、何よりこれではローマ・カトリックとその一派であるOpus Deiはまるで犯罪組織扱いではないか、馬鹿にして、という事らしい。とは言えキリスト教が嘘っぱちであるというのはあからさまに分かりきっているし、結局は信仰の問題であるのだから、実際のところ後者が問題なのだと思われます。

元よりOpus Deiはその名前でGoogle検索すると一番にヒットするのが批判サイトだったりしたほどの嫌われ者組織ではありましたが、まさか本の悪役にさえなるとは、というのが大方の意見でしょう。まあ、ここまで色々言われるということは、全くもって潔白な組織であるわけではないのでしょうが、表向きは「日々の生活、それぞれの仕事の中にこそ聖性を見出す」というモットーで活動する属人区教会(特定の本部教会を持たないが、組織内に非物理的な教会組織が存在する)で、メンバーは世界85.000人を数えます。まあ、それほど多くはありません。

しかしそのモットー(なんだかプロテスタント風でしょう?)の関係上、構成員はインテリかつ社会的立場のある人が多いため、影響力の大きさと共に重大な利害関係者の存在も想像されます。また、カトリック教会内部保守派から見てもいかにもこのモットーは軟派というか、端的に言ってしまえば「修道院を何だと思ってるんだ!」ということになるわけで、そのくせこの組織には先の教皇様なんかのお墨付きがあったりもして、密かに憤懣やるかたない組織もあちらこちらに見られたのでした。

ともあれ、世界の超強力なオピニオンリーダーとしてのカトリック教会ですが、その内部に存在する亀裂を狙ったあたり、ローマ攻撃としてのこの『ダヴィンチ・コード』という作品はお見事と言えるでしょう。現在のところ戦果は上々、「やっぱりカトリックはあかん」という世論を作り出すことにますます成功しているように見えます。加えてその大部分を素朴な信徒が占めるカトリックにおいて、こういう内容の作品が及ぼす影響の大きさは計り知れず、ローマの心労は同情に値するほど。

個人的な話をするなら、確かに宗教はしばしばとんでもない事態を引き起こすのですが、欧米において主流になりつつある無神論の力は、何というかそら恐ろしいもので(本当の無神論者は怖い)、たとえそれが非常に後ろ暗い部分を持っているとしても、目に見える組織として確かに存在し、たとえ嘘っぱちだとしても信じろと主張する、バチカンやOpus Deiなんかの方が、いくらか健全のような気はします。言うまでもなく 何に比べて? という質問は控えて下さいませ。

参考
http://www.opusdei.jp/ Opus Dei 日本語HP 
http://clinamen.ff.tku.ac.jp/Peru/Opus_Dei.html Opus Deiとフジモリ大統領の癒着?