宇沢弘文『経済学の考え方』岩波新書

天下の経済学者、宇沢先生著の経済”思想”入門書。しばしば合理的で冷酷な(あるいは理屈倒れ気味の)社会分析ツールとしてのみ捉えられる経済学というものを、その発生の起源にまで遡り、各経済学者の思想を順々に解説していくことで、それが本来抱える哲学をわかりやすく解き明かした一作。経済学を生み出したアダム・スミス以下数名の善良な思想家の高邁さと、彼らの言葉に込められた理想の背景が理解できると同時に、それらの思想がいかにねじ曲げられて現在に至っているのか、ということが実に良くわかる。まさに数学者のおもちゃと化した現在の経済学に賛成するか否か(確かにそれは社会分析ツール、あるいは概念分析パターンとしては非常に優秀なアプローチを提供してくれる)はともかくとして、経済学の良心としての制度学派を理解するにはとても良い本。
(でもシカゴ学派の人は腹を立てるだろうなあ)