清瀬みさを 人文学としての芸術研究 法律文化社

世界には唯一の学知のみが存在する。それは素描であり、絵画と言い換えてもよいが、総てはそこから派生する      ミケランジェロ
美とは何か、わたしはそれを知らない      デューラー

イタリアルネサンスを中心に据えて、芸術(ことに美術、あるいは視覚芸術、造形美術と呼ばれるもの)の歴史と思想を解説。古典時代のギリシアに始まり、ルネサンスの中自意識に目覚め、自己の価値を主張するまで、人の手になる創作の中でも下位におかれた視覚芸術とその担い手たちの物語。けして平易なテーマばかりを扱っているわけではないが、そのウィットに富んだ文章と美しい文体はページをめくる手を止めさせない。難解な内容を易しく、退屈な内容を面白く、多くの金言箴言を交えて語る。美術思想の概観に向くのみならず、私のような門外漢の芸術入門書としても素晴らしい一作。