シンフォニック=レイン



       すると、物語がよみがえってきた。次々と細かいできごとまで、いわば完全な形で、僕をもう悲しませないように、きちんと完結し、整えられて。なんて悲しい物語なんだろう、と僕は長いあいだ考えていた。いまではそれを幸福な物語とみなしているというわけではない。しかし、いまのぼくは、これが真実の物語なんだと思い、悲しいか幸福かなんてことにはまったく意味がないと考えている。