GUNSLINGER GIRL 10 感想

GUNSLINGER GIRL 10 (電撃コミックス)

GUNSLINGER GIRL 10 (電撃コミックス)

 「ガンスリンガーガールの10巻はトリエラが可愛い」という話を聞いたので買ってきた。ロシア組にあまり興味が持てなかったので9巻を放っておいたのに、いつの間にかまた物語は1期生に焦点を当てていたらしい。だらだらと引き延ばすよりは潔く幕を引こうという意志を感じる。好。

 舞台をイタリアと言明しているにも関わらず、一切教会が出てこない不思議な作品である。言わずと知れたカトリック総本山を擁するお国柄、至る所に教会の姿は認められる。少なくとも旧市街においては家20軒に対して教会1軒のイメージでよい。ちなみにBARは10軒に1軒。

 モチーフに自覚的な著者である。実際、彼らのやっていることは、誰かの個人的復讐(vendetta - 10巻)に過ぎないわけで、「右の頬を打たれたら左の頬を出せ」とはほど遠い。結局「こいつに真実の愛を教えてやってくれ」(同4巻)という話なんだろうけれど、言葉にするといかにも安物。お手並み拝見と行きたい。

 

 で、トリエラ。殺害ビデオの被害者として危機的状況にあったところを、現在彼女のハンドラーであるヒルシャーたちに助けられた少女。皮肉にも、改造手術の末にアサシンとしての役割を与えられ、彼と共に血を流したり人を殺したり殴ったり殴られたり。生前(こう言ってしまって良いと思う)の記憶はほとんどないものの、肉体的にも精神的にも、改造の程度は比較的軽いらしく、生理痛に悩んだりアイデンティティに悩んだりと青春的で実存的な毎日を送る。

 トリエラのようなアサシンは例外なく薬剤投与等による洗脳を受けていると言う。そして洗脳の中には、「ハンドラーに絶対の忠誠を尽くす」という条項が含まれる。そこで彼女は悩むのである。私のこの気持ちは、果たしてただの洗脳の結果に過ぎないのであろうか。結局、彼女は職務に打ち込むことで懊悩を昇華しようと試みるのだが。

 4巻で繰り広げられた彼女とテロリスト:ピノッキオとの攻防は、おそらく作品中でも一二を争うスペクタクルだ。思わず僕はその舞台、トスカーナモンタルチーノまで出かけてしまったくらい。有名な観光都市からのアクセスが微妙に悪く、名産ワイン「Brunello」で注目されることがなければ、他の小都市と同じく名を知られることはなかったはず。

 

 'CAFFE' FIASCHETTERIA 1888は、ワイン好きなら誰でも聞いたことはある程度の銘柄「Biondi Santi」の創始者Ferruccio Biondi Santiが開いたワイン立ち飲み屋。トリエラとヒルシャーも恐らくここでブルネロを味わったり吹き出したりしたと思われる。街壁に沿ってぐるりを歩いても一時間かからない小さな街の中央、Piazza del Popolo広場に面していて、蔵出しのブルネロをグラスで楽しめる。店員の感じも良かったので、午後をまるまるテラスに座って過ごした。

 まったく関係ない方向へすっ飛んでいった話を元に戻そう。10巻の眼目は、トリエラがついに迷いを振り切る点にある。相変わらず呆けた振りをしたままのヒルシャーが今後どう行動するのか、期待を持って見守りたい。そしてもし、ミミの言うとおり、彼女が「物語のヒロイン」であるならば、その結末は「めでたしめでたし」であると願いたいものだ。


P.S. 誰かあのシーンの上にかかっている絵の詳細を教えてください。