GUNSLINGER GIRL

GUNSLINGER GIRL 5 (電撃コミックス)
永瀬望さんへのレス
ここ http://d.hatena.ne.jp/kaien/20050529/p2#c 及び
ここ http://d.hatena.ne.jp/hajic/comment?date=20050601#c への言及
えへへ、ばれてしまいました。さすがに大人げないなと思って、こっそり自サイトに載せていたのですが、それはそれで大人げない罠。なお、正義の問題については、おそらく私たちの間には議論の必要はないと考えます。

私も、薬が切れれば死に行く者に
「今ここから逃げ出して束の間の幸せを掴もう」などと言えません。
この場に居る方がまだ長生きできますから。

確かにその通り、彼らは身動きが取れない。現実的な問題としては仰る通りです。ただ私は、また意味論的?な視点からもその理由付けが可能だと思っているのです。つまり、今作で幾度も繰り返された謝罪の言葉、クリスティアーノ、そしてフランカの「許してくれ」「ごめんなさい」の意味から。それは前者はもちろん、おそらく後者も同様に、愛の存在を認めようとしなかった過ちを悔いるものでした。*1 しかし、謝罪した=愛を認めたその瞬間、彼らは戦えなくなり、作品から退場してしまう。*2

そう、ヒルシャーが最終頁で無言にならざるを得なかった理由は、少なくとも今現在、彼がけして愛を認めるわけにいかないところにあります。つまりGUNSLINGER GIRLという物語において、ある主体が愛を認めると、その主体は戦えなくなり、物語からの降板を余儀なくされる。*3 トリエラに「愛してる」なんて言った瞬間、彼は彼女にあんな仕事はさせられなくなりますから*4 、思っていても言えないし、謝りたくても謝れない。彼はわかっていても自己欺瞞を続けざるを得ない。

かくして、行き詰まるべくして行き詰まった二人の関係を打破するためには、どうあっても、第三のベクトル、外部からの助けが必須でしょう。ヒルシャーは無理、トリエラも無理、だとするならば、そのあたり、適任はピノッキオ*5かなあと近頃私は考えております。*6 なんにせよ、第五巻は素晴らしい。久々に心躍るストーリーでした。加え、今作をふまえた上で、改めて第一巻から読み返してみると、これまで何気なく見過ごしてきたたくさんのシーンが鮮やかに意味を持ち始めます。第二巻・第八話など、それが扱っている内容こそ、本作のテーマそのものだと思えますが、さて、いかがでしょうね。


はじC

*1:自分でもわかっているつもりですが、結構強引な論理を展開しています。

しかし少なくとも、クリスティアーノの謝罪は彼がピノッキオへの想いを偽っていたことへの謝罪でした。一方、フランカのそれはさっぱり証拠がありません(故に推論を展開する他ありません)が…少なくともフランコはフランカを愛しまくっております。ピノッキオがフランコに「恋人なの?」と訪ねた時、彼は否と答えましたが、続いて「彼女は俺に生きる理由を与えてくれる」だとかなんとか発言しました。

そう、もしピノッキオが「フランカを愛している?」と訪ねたとしたら、おそらく彼の答えは、是だったと思われます。フランカがフランコに謝罪する理由があるとすれば、そのあたりでしょう。つまり、フランコがいくら彼女を「愛して」いても、片側通行であれば「恋人」ではない。その想いを受け止めようとしなかったことに、彼女は気づき、謝罪したのではないか…というのは、やっぱり強引でしょうか。

*2:フランカの場合、戦えなくなったから謝罪した=過ちに気づいたという可能性もありますが、クリスティアーノも謝罪の言葉を口にして国外逃亡を図りますから、どちらにしても戦いの舞台から降板するのは同じです。

*3:ラバロとマルコーの比較が好例。ラバロはクラエスへの愛を追求し排除され、マルコーは「愛が足りない」(第三巻p131)ので、アンジェにつらく当たりながら(空しく)生きながらえています。

*4:”恋人”を”道具”として”人殺しさせる”なんてあり得ません=それはあらゆる意味で『愛』の否定。なのですが、ちょっとここも強引ですね。まだ考える余地が残っていると思います。まあ、例によって聖書を引用するなら、「汝の敵を愛せ」とか、いろいろあるのでしょうが。少なくとも、トリエラのことを本当に大事に想っている(愛していると認める)ならば、現在のような状況を許容することはできなくなるでしょう。

*5:そしてクラエス…彼女の毛はどことなく青っぽいし(第三巻p64、トリエラの朗読する『ピノッキオ』参照)…これは強引すぎますかしら。

*6:ヒルシャーはトリエラへの愛を認め、彼女に”謝罪”しなければなりません。しかし、それは上で述べたとおり、彼の”物語からの退場”を意味しますから…ああ、ヒルシャー。(つД`)