誇大妄想はお好き?

君が望む永遠 DVD specification 通常版

まず君望の何が有り得ないって特に何の魅力もなさそうな主人公が同時に無条件に複数女性から惚れられまくることで、この最初から無理な設定の上で読者を無理やり悩ませようという算段は確かにあざといとは思う。

ただ、こんなことになる確率をあり得ねーと言ったら例えば、人工知能が自意識を持つまでに高度化する、ヒトと機械の境目はどこに、とかそういう事件も現実にはまず有り得ないわけでこれはこれでひどいし、実際そういう無理やりな前提のお話はたくさんあるから設定がどうこう、というのは評価基準から排除したほうが良い感じ。

その上で、なかなか白黒付けられない主人公が気にくわない、という主張であれば好き嫌いの範疇で理解できる。緑の人に酷いことされてムシャクシャしたとか、気の毒でケナゲに生きてる少女が気の毒に死んでお涙頂戴があざといとか、知的障害者気味の後輩とか、そういうのも本編に関係ないやんってことで無駄だって主張もわかる。実際いらないと思う。あってもなくても変わらないようなお話なんだから結局好き嫌いの問題。

それより根本的に、どう足掻いてもハーレムルートがないのはひどい話ではないか。設定がまず有り得ないんだから有り得ない結末が一つくらいあっても良いのに。どんなゲームをしてもまず一周目は目移りしているうちにバッドエンドに辿り着く僕はハーレム大賛成。いいじゃんみんな主人公好きなんだし一人に絞らなくても。王様王様。

ふざけてる? 元から有り得ない仮定なんだから有り得ない答えが出るのはむしろ必然でしょう。「世界中の異性から愛されたら?!」真面目に考えるだけアホらしい。壮絶な誇大妄想を終始大真面目な顔で語られたら拒否反応が出るのは当然で、そういう意味で君望が好きじゃないと言う人の気持ちは正当なものかもしれない。君望を真面目な顔で語ろうとする人々に対し君アホちゃうかと言いたくなる気持ちはわかる気がする。

ただ、アホな仮定にアホだなと思いながらつき合うというのは案外興味深い経験だったりするんじゃないかとも思うのだ。『明日の雪之丞』の主人公は問答無用でモテモテだけれどその理由は一目見ただけで誰もが恋に落ちるほどの美貌だった。馬鹿すぎる。ストーリーも馬鹿だった。でもそれはそれで楽しかった。妙に深刻な設定のコメディだと思えば、まあ、君望は妙にクドいからそれも難しいかもしれないけれど、うーん、僕は好きです。そう、茜が好き。