杜氏の郷 追憶


日本酒で思い出すゲームは『杜氏の郷』。
杜氏清酒づくりのキーマンというか総監督というか、まあボス。酒の大量生産体制が整い始めた江戸時代以来、農閑期の農村から出稼ぎ労働者を迎えての酒造が日本各地で行われ、なかでも優秀な熟練労働力を継続的に提供した村落を杜氏の里と言う。
そんなご大層な名前にあやかっている本作の設定も新潟、有名所では、ええと、忘れてしまったけれどいくつかあったはず。とはいえ主人公を筆頭に出稼ぎに行くわけでもなく、普通の酒元が舞台の普通のお話。一冬でいろいろ仕込むのだけ同じ。
ひと言で主人公の存在意義が微妙に怪しいという、あの『はぴねす』にも共通する特徴を持った(困った)作品で、この水面下の不気味な胎動がプレイヤーを無意識のうちに不安にさせずにはいなかったせいか、あまり売れたという話を聞かない。
特に何ができるわけでもない平凡なおたく準拠な主人公を職能集団の中に投げ込んで主役を張らせようという設定に元々無理があるような気もする。こういう設定下ではまじめに純愛をするよりも、陵辱系とかにしたほうが爽快感はありそうだ。
ともあれ、酒造りうんちくなんかもある個性派だし女の子もたくさんいるし肝心のシーンも何パターンもあって、わりかし丁寧に作ってあるのに気の毒である。プレイゲート版はエラーがわんさか出て大変だったみたいだし本当にお気の毒であった。なむなむ。