あらすじについて

落語は比較的ネタバレに寛容なジャンルかと思うけれど、下の文章はネタバレなので一応ご注意を。でも実際、笑い落ちならともかく、考え落ち系はあらすじを知っていた方がかえって、例えば演者の表現なんかに注目できて、楽しみが増すような気がする。このあたりはオペラなんかとも共通する点かもしれない。ごくシンプルな筋書きがどうドラマチックに調理されるのかをドキドキして待ち受けるのは、観劇の最大の楽しみの一つだろう。そしてシンプルな物語は、それがシンプルであるがゆえに、あらゆる意味を同時に現す。ストーリーだけを追っていてはなかなか掴めない世界。その時、あらすじは実はあらすじでさえない。そこから本当の物語が立ちあがる、一種の踏み台なのである。