その気配

なぜならば、そのような存在を感じるためにこそ、私たちは物語というものをよむのだから。そして、最良の物語には、とらえどころのない、しかし私たちにとってひどく切実な、「者」を越えた存在が、かならず感じられるのであるから。
ターン, 解説

やがて、旅の終わりに私たちは、知る。『スキップ』が、言語宇宙に咲く<神は細部に宿りたもう>物語であることを。
スキップ, 解説

物語を紡ぐということは確かに神の業だが、哀しいかな人間は神ではなく、自ら生み出した世界に対してさえも全能ではない。物語を結末に導くことに比べ、世界を壊すことの如何に簡単なことか。はっきり言ってしまおう。物語が結末に辿り着くことは、ある意味で奇跡に他ならない。けれど、だからこそ、その「どうしようもないこと」をはっきりと見据え、それに向けた明確な意志を持つ著者が紡ぐ物語は、神の似姿、人の限界と切望を明らかにするが故に、それ自体が紛れもない祈りとなる。