学部生時代気に入っていた講師先生がいつのまにか助教授になられていたことを知る。演習質にて先生の著作を読んでいたところ、偶然それを見かけたゼミ仲間が教えてくれたのだった。話を聞くと彼は昨年まで先生の元で学んでいたらしく、「いうならば愛弟子ですね」と鼻息も荒い。今度一緒に遊びに行きましょう、と誘ってはくれたのだけれど、今度がいつになるのかサッパリわからないので一人で訪問することにした。ごめんよKくん。
おそらくここだろうと見当をつけて向かった建物に、はたして先生の研究室を発見。二年ぶりの先生は相変わらずエレガントで、相変わらずスマートで、相変わらずタバコをバスバス吸う。前任者が残していったというNECのデスクトップのキーをぎこちなく叩く先生は、それもそのはず根っからのマッキントッシュ派なのである。「どうにも使いにくくて嫌」と言いながら、ワードごとシャットダウンする仕草も投げやり気味に美しい。ああそういえばこの人、何歳なのかもよくわからないなあ。
デスクのわきに置かれている小さな木のテーブルで互いの近況やなんや(先生の赤いスクーターや私の新しい薄暗い研究室やマックOSXのうねうね性)について話しているうちに時間も過ぎたのでいとまごい。スティーブン・キングの言う通り、ハイな時間は別の速さで進むのだ。来週の講義ではオイディプスのビデオを上映するからぜひおいで、とおっしゃる先生に、わざわざ戸口まで見送っていただく。来週はもちろんお邪魔させてもらうつもり。問題はただ一つ、どうやったら一限に間に合うよう起きられるかだけである。