何をしているかと言えば

イタリア中北部、エミリア・ロマーニャ州パルマ市コロルノにある私立おいしいもの科学大学院に通学しています。スローフード協会イタリア本部が昨年から設置した公的教育機関で、あっちに美味しい物があると聞けば出かけて食べ、こっちに楽しいワイン品評会があると聞けば押しかけて飲む、という具合の毎日(4分の1くらいは本当)。それでも卒業(修業年限一年)するとイタリア文部省認定おいしいもの修士号(はったり度95%)が貰えるというのですからイタリアは恐ろしい国です。なお現在、来学年度英語コース(今年九月開始予定)の募集が行われている模様。突然締め切りになるので、興味のある方はお早めに。英語で対応してくれます。


パルマにあるアパートから学校まではバスで25分程度。距離にして15キロ前後離れているので、面倒と言えば面倒です。が…実はこのバス、国鉄の駅のあるパルマからコロルノに通じる唯一の公共交通機関のくせをして、平日18時15分終発、日祝日と来たら一日3便かそこらという具合。いちおう単線電車路線があるようなものの、敷設中だか工事中だかで運行はいつになるやら分かりません。よっぽど田舎で引き籠もり生活を送りたい人、ないし良い自転車を買うつもり、あるいは自家用車持ちをたらし込む自信がある人以外にはコロルノ住まいはお薦めできません。なおパルマからのバスには何故か毎日酒臭いおじさんが乗っていて、彼の渾名は「ワインの先生」。


パルマは生ハムやチーズ(パルメザン/パルミジャーノ)といった畜産加工食品の名産地として、そしてまたヴェルディの生誕地としても有名な中規模都市。経済基盤が比較的にしっかりしているため、経済的にも文化的にも豊かさを感じます。観光に頼らない自律した経済が地域の安定を保ち、観光客の少なさがスリなどの不良人口の流入を抑制している事実は、「観光立国」を叫ぶ日本にとって一考の余地があるのではないでしょうか。その上で、ファルネーゼ劇場に代表される歴史ある文化施設や各種大学の存在が、パルマにただの食品加工業の街ではない、文化都市としての雰囲気を与えていることは重要でしょう。規模的にはけして対したサイズではありませんが、なかなか興味深い都市です。


追記:音楽の街としてもそれなりに名が通っているとかいないとか、街中ではしばしば流しの奏者に出会います。へっぽこラッパ吹き(レパートリーが少ない上に下手くそで、ミサの最中に教会の前でゴッドファーザーのテーマを吹くなど空気の読めない駄目なやつです)、そこそこバイオリン弾き(ロケーションと曲によってはまあまあ聴けますが、基本的にわざわざ立ち止まって聴きたいとは思えません)、そしてやたらと上手なアコーディオン奏者(こいつは多分プロだと思われます、というのもまずアコーディオンがむやみに上等、ミサ曲からジャズまでやたらと広いレパートリー、あのハンサムな面構え!)、といった面々が夕方の街角を賑やかに。まあひと言で言えば呑気な街なのでしょう。悪くありません。


以上、博物士さんにいじめられたからと言うわけでもないですが近況報告でした。
近くまでお越しの際はお気軽に声をおかけ下さい。