スティーブン・キング『不眠症(上・下)』

不眠症 (上) 不眠症 (下)
ダークタワーシリーズの外縁に位置する(ことだけが存在意義の)トンデモ小説。不眠症に悩む70歳のおじいさまが主人公という時点でまず冗談。序盤は彼の悩みと愚痴が延々と続くので一体何の話をしているのかわからなくて困るし、不眠症の度が過ぎた彼がいろいろ幻覚を見始めるあたりで物語はやっと動き出す。その後ストーリーはじわじわと進むものの、そこには致命的に迫力が欠けている。設定が冗談なのにもかかわらずシナリオにさっぱり迫力がないので、まるでB級ホラーそのものだ。かくして残念ながらこの本はキングのゴミ作品リストをまた1行伸ばすだけの価値しか持たないことが判明した。ハードカバー版のオビに書かれた「キング近年の最高傑作」とかいうあおり文句につられた愚か者がこれ以上増えないことを祈る。

■はじCアワード キング近年の最高すっとぼけ作品賞 受賞