Vedi, questi filosofi

この哲学者を見よ―名言でたどる西洋哲学史

この哲学者を見よ―名言でたどる西洋哲学史

うわあ、これはいい本です。いわゆる哲学の流れをイタリア人の軽口にのせて語ったらこうなる、という見本。
言うまでもなく、思想の解釈は根本的にそれぞれの人が行うものであって、誰のどの本が正しいかという話はできません。
けれど、「誰が(だいたい)どんなことを言っていたのか」を知ることは、素直に納得するにせよ、違うだろと反発するにせよ、はじめの一歩として有効です。

言い換えれば、哲学史を扱う多くの本が、とにかく難解で、いや、むしろ、嫌になるくらい退屈な、言ってしまえばひどい悪文に満ちていて、気づけば僕らの眉間に縦ジワを寄らせる、つまり僕らが足を踏み入れることさえ阻んでくるのに対し、この本はほのぼの読めるのです。
たとえばギリシャ哲人たちの話題なら、かならずと言っていいくらいディオゲネスの台詞が引用されて、――だいたいろくでもないことを彼は言うのですが――、結果、彼らは偉大な賢人だったというよりも、変なおじさんたちだった、ということになります。
んなわけないだろ、違うだろ、と思うのは自由。そしてそれこそが、それぞれの思想を深めるためのファーストステップに他ならない、僕はそう思います。
著者はもちろん、翻訳者の方の性格なのでしょう。親しみやすい本です。