カテジナ・ルースの思いで

  
Vガンダム』の主人公の一人。愛情を込めてカテ公とも呼ばれる。不幸にもヒーローが居なかったために零落し、悲惨な末路を辿った。その白眉はやはり最終話、シャクティとの最後の会話だろう。「冬になると、なぜだか悲しくなりません?」とカテジナ。彼女の状況を把握しながら引き留めようとしないシャクティ。見上げる空からは雪が降りそそぎ、彼女の後ろ姿は廃墟の故郷へと向けて消えていく。勝者と敗者の冷然とした断絶。現れたウッソの言葉が鋭い。「シャクティどうしたの、手が氷のようだよ」「川で洗い物をしていたから」…。

まあ、男を見る目がなかったんですなあ。戦時ということもあり、周りにまともな男が居なかったのもあるでしょう。一人は14歳、もう一人はシスコン。裕福な家に育ち、誰も自分を見てくれないという状況に慣れていなかったのかもしれません。それにしても、やることなす事が裏目に出る様はスティーブンキングの十八番『逆喜劇』を地で行きます。笑ってしまう程に悲惨。けれど彼女の姿は視聴者に鮮烈な記憶を残しました。「戦いなさい、私のために!」と本気で呟いたヒロインが、アニメ史上何人いることか。

地球まぬけ時空計画を発動する趣味の帝国、時代錯誤のギロチン復古、両親は息子を放りだしてテロ活動、味方は全員で神風特攻。何もかも狂っていた世界の中で、案外カテジナこそが一番素直だったのかもしれません。けれどそのために手を血で汚した結果、頼る人も帰る家も、瞳の光まで失った、哀れなルース。彼女が罪を犯したとしても、それはあまりに過酷な罰だったのでは。エンディングテーマ「もう一度TENDERNESS」が、彼女のことを歌った歌であるのはおそらく間違いないでしょう。

そして再び、君に出会えたなら。セツナス。