天使達の昇天

カテジナ・ルース 愛と憎しみの悲劇


 金儲けにしか興味のない父の元で、当たり前の愛に飢えながら育った少女カテジナ。孤独ゆえのプライドが高さから他人を容易に近づけようとしなかった彼女だが、隣村に住む年下の少年ウッソ・エヴィンから朴訥な好意の視線を受け、戸惑いながらも密かな幸せを感じ始める。ところがそんなある日、あろう事かウッソは彼女の制止を振り切って戦争に身を投じてしまったのだった。その側にウッソの幼なじみの少女シャクティ・カリンがいることを知り、あまつさえ彼の友人から銃を向けられたカテジナは、ウッソに裏切られたと感じ、敵側将校であるクロノクル・アシャーに取り入ることで復讐を誓う。

 自分よりも年上であり、有能な青年将校であるはずのクロノクルに第二の拠り所を見いだそうとするカテジナだが、彼はウッソとの戦いにことごとく敗北してしまう。その上彼の行動のすべてはカテジナのためではなく、愛する彼自身の姉のためなのであった。愛したウッソに裏切られ、情けないシスコンクロノクルも見限るしかなかったカテジナは、己の境遇に涙しすべてを憎む。

 かくして彼女は憎悪と嫉妬に狂う戦鬼となり、恐るべき力でウッソ周囲の女性兵士を、そして彼女に銃を向けたウッソの友人らを殲滅。ついに憎き恋敵シャクティを抹殺し愛を取り戻そうとする彼女だが、ウッソの邪魔が入り失敗してしまう。かくなる上はウッソを殺し、彼を永遠に自分のものとしようとするカテジナ。しかしこの彼女最後の望みも理不尽な謎の力によって潰え、彼女は戦場の爆風の向こうに消えていくのであった。

 戦争終わって平和が戻った地球。ウッソと共に故郷に戻り平穏な日常を送るシャクティの前に、うらぶれた姿のカテジナが現れて故郷の町の方角を訊ねる。居場所も頼るべき人も、そして光すら失ったその瞳にサングラスをかけた彼女は、去り際にこう呟く。
「冬になると、訳もなく悲しくなりません?」

〜FIN〜

解説:
実際、ウッソとシャクティには何の魅力もないんだもの。