ROOM NO.1301#2 好きにならない約束

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「私のこと絶対、好きにならないで欲しいの。それを私に約束して」
「僕がどんな人間なのかはさっき話した。大海さんがいても、僕はホタルを押し倒したんだ。だから有馬さんを好きにならないなんて約束はできない」
「でも、約束を守れるって信じることはできると思う。それを信じて欲しいの。絹川くんは私との約束を守れるって」
「信じて約束をしてくれってこと、だよね?」
「うん」
「わかった。約束する。僕は絶対に有馬さんを好きにならない。そう約束する」


君が望む永遠』を彷彿とさせるシリーズ。主人公はその冒頭、今は亡き彼女の言葉を回想する。「それはきっと愛情じゃなくて、同情だよ」。有馬冴子。恋人である大海千夜子とプラトニックな関係を続けながら、周囲の女性達に求められるまま関係を持つ主人公の前に現れた、不特定多数とひたすら身体を交わす少女。"必要に迫られて"同居する二人だが、その初夜、彼女は彼に約束を求める。


誓い。信じて、約束すること。「永遠に"好き"であり続ける誓い」の対面にあるそれが、彼女と彼を結ぶ絆。憐憫は愛ではないらしい。では愛情とは何なのか。そして、同情とは何なのか。全てが終わった後として語られるプロローグを見る限り、主人公には最後まで分からないのかもしれない。だとすれば、それはおそらく彼が彼女を失った理由。そしてそれこそが、本作の提示している問いのように、僕には見える。


Pity's akin to love. 憐憫は愛情に似たりというフレーズは、僕にいつも『三四郎』を思い出させる。その結末、不可解な結婚の寸前、美禰子はこう呟いた。「我はわが咎を知る。わが罪は常にわが前にあり」。旧約聖書内、詩編51。誤ちを認め、悔悛し、それでも罪を犯し続ける自らを知りながら、救いを求める人の叫び。冴子の叫びは、届くのだろうか。


神よ、汝の御あわれみによりて、我をあわれみ、汝の深い慈愛によりて、わが咎を消したまえ.
絶えずわが咎を洗い去りて、わが罪を清めたまえ.
われ、わが咎を認め、罪は常にわが前にあり.
ただ汝に向かいて、われ罪をおかし、御目の前に悪しき事をおこなえり.
み言葉のうちに汝が正しきを認め、汝が裁きに偽りなし.
罪の中にわれを、母は生み、われ、不義の中に生まれたり.
汝は真実をのぞみ、わがかくれたるところに智慧の深さを知らしめたまう.

ヒソプをもてわれを清めれば、われ清くならん.
われを洗いたまえば、雪より白くならん.

汝、もはや、いけにえを好まれず、われは供物をせんとても、汝それを喜ばず。
神へのいけにえとは、悔悟せし魂。神よ、汝は、悔い改め、へりくだりし魂を軽んずることなし。
慈愛にみてしみ心によりてシオンにあわれみをくだし、エルサレムの城壁をたて直されよ。
その時捧げられるべきいけにえ、供物と捧げものを汝うけいれ、かくしてわれ、汝が祭壇に雄牛を捧げん。