ある日、爆弾が落ちてきて

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)
表題作である”ある日、爆弾が落ちてきて”を含む、古橋秀之による七本の短編集。ご丁寧にも作者自身が後書きで全て「時間もののバリエーション」だと解説してくれますが、個人的にはむしろ「幽霊もの」のバリエーションではないかと思います。あまり詳しく述べるとネタバレそのものとなりますが、幽霊に代表されるこの世ならざるものに深く関わることは、先方が意識しようがしまいが最終的に主人公を彼岸に導く危険を孕む(つまり、どこかで決別しなきゃいけない)、というのがこの手のお話のお約束。実際のところ、主人公の立ち位置あるいは此岸の在処さえはっきりしない”おおきくなあれ”は除くとしても、ヒロインはみな何らかの意味で”あっちの世界”の存在で、しかも冒頭作を除いて彼女らによる世界の彼岸化はほぼ成功しているという、ある意味でちょっと怖い作品集でもあります。とは言え、そのあたりを鮮明に打ち出したからこそ、あの表題作はちょっぴり切ない、微妙に味のある話に仕上がっているのでしょう。その見事な裏面が”恋する死者の夜”であり”昔、爆弾が落ちてきて”なのは、なかなか皮肉が効いていて良いというか、効き過ぎというか。