いちご同盟

いちご同盟 (集英社文庫)


あなたがすき  死ぬほどすき


彼女がそうならなければ、彼と彼女は出会わなかっただろう。でも現実に彼女はそうなって、その結果、彼と彼女は出会い、そして別れなければならなかった。これは幸せなことなのだろうか。それとも、不幸なことなのだろうか。いつかなくなってしまうなら、意味がないのだろうか。それとも最初から、どこにも意味なんてないのだろうか。なら、起こらなければ、終わりもなかったのに。それは、とてもとても悲しい物語だった。でも、本当に悲しい物語なのだろうか。私は時折、繰り返し繰り返し「亡き王女のためのパヴァーヌ」を聴く。それは間違いなく、悲しい。そのはずなのに。悲しいから、忘れたいはずなのに。私はこの記憶を失いたくない。いつか終わる時まで、ずっと。おそらくこの気持ちは、私にとって、最も永遠に近いのだ。あまりに悲しいけれど、絶対に忘れたくない経験。ことばにしたくて、ことばにならない経験。私の心の奥に、ことばにならない場所に、いつまでも引っかかっている何か。私がふとそれを見つめるとき、この物語はいつも鮮やかに甦る。私が最も好きな本の一冊。