天使と悪魔のイタリア

天使と悪魔のイタリア (中公文庫)
イタリアに関する幻想をモリモリ高めてくれる魔法の本。幻想。東京にせよ、軽井沢にせよ、京都にせよ、北海道にせよ、私たちの憧れの地というものは実際のところ、冷静に見ればあまりたいしたものではない――下手をするとロクでもない――場所であることが多い。にもかかわらず、そこに人々が集まるのは、そこに何らかの幻想があるからだ。それも多少の現実を塗りつぶしてしまうほどの、強烈な幻想が。そしてそんな幻想、それをまとったその地とは、一種、魔法のかかった地と言っても良いだろう。
本書の扱うイタリアという国にも、たぶん、多かれ少なかれ魔法がかかっている。つまり、真っ赤な恋の魔法が。しかしご注意。アモーレ、それはけしてただ甘いようなものではない。むしろ ”omnia vincit Amor” 「恋」、それは万物を打ち負かす。それは時に、我々のあらゆるものを踏みにじって、可哀想とも思わない神の名でもあるのだ。だから、イタリアを舞台にした物語は、ご存じ、あまりにも悲しい恋の物語が多い。そう、恋は、我々に襲いかかってくる。そして、我々は絶対に、それには抗えない。 ”et nos cedamus Amori” 我々は、恋の力には屈するしかない。


イタリア大好き。