戸部民夫 『「日本の神様」がよくわかる本』 PHP文庫

「日本の神様」がよくわかる本 八百万神の起源・性格からご利益までを完全ガイド (PHP文庫)
そこらの寺社の多さを見れば、「日本人は無宗教」という話が嘘っぱちであることはすぐわかる。すぐわかるがさて、それらのお社でいったいどういう神様が祭られているのかと問われた場合にさらさらと答えられる日本人は少ないのではあるまいか。かく言う私もついこないだまでお稲荷さんはお狐さまを祭っているものだと思っていた。私にそれを教えたのは既に亡き祖母だから、きっと彼女は死ぬまでお稲荷さんはお狐さまだと思っていたに違いない。
実際お稲荷さんに祭られている神様の名前は宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)。当然ATOKは変換してくれないがそれはともかく、お狐さまはあくまでこの宇迦之御魂神の御使いなのである。御使いは神様と人間の間を取り持ってくれる精霊だから、神様よりは親しみやすい。加えて日本の神々は人格神なので、チヤホヤされると喜ぶ。だからおそらく御使いのお狐さまも同じだろう、という具合にお揚げをお供えしているうちに、お稲荷さまでは神様を祭っているのかお狐さまを祭っているのかわからなくなってしまったのではないか。
この本の紹介はそんなお稲荷さんから始まり、八幡さまにお伊勢さま、天神さまとメジャーどころがずらりと並ぶ。他にも「山・水・海に関する神々」や「聖母と純愛の女神」「農耕生産の神々」等々、計九十九柱の神々の豪華ラインナップ。それぞれの神様について神話伝承はもちろん、機能や個性、そして肝心な神徳(つまり御利益)などを解説。お参りしやすいようにと?関係の深い神社の紹介までしてくれる。この本を読むだけで家の近くの神社の祭神について詳しくなれるし、折々のお願いにどの神社へ行くべきか悩まずに済むだろう。ただし、出先で見つけた神社の祭神が知りたくてならなくなる副作用は覚悟しないといけない。