類は友を

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下宿の裏の塀の上を通り抜ける黒猫を餌付けしはじめて二週間弱、ついにニャーンと手の届く範囲まで近づくほど気を許してくれた。嬉しい嬉しいと猫缶を買い足しにスーパーへ行ったところ、店内で偶然友人と出会う。「せっかくだから二人で牛を食べよう、今夜はビーフストロガノフだ」とむやみに盛り上がり、牛肉400グラムを買い込むがどうやら二人ともビーフストロガノフの調理法を知らないらしいということが判明したのはレジをすぎた後のことである。仕方ないので「おそらくクリームが入るはずだ」「クリームなんてないから牛乳を入れよう」等々いきばた気味の試行錯誤を繰り返した結果、ついに見事な洋風すき焼きができあがった。いや間違ってもビーフストロガノフではないがこれはこれで食べられる。
さてビーフストロガノフもとい洋風すき焼きの匂いにつられてやってきたのは件の黒猫である。事情を知らない友人は大喜び、名前は何だ飼い猫なのか雄か雌かと私の知るわけもない質問を繰り返した後、猫の目の前にすき焼きを持って行って見せびらかし始めた。さあご馳走だと大興奮の猫だが、もとより猫に牛をプレゼントする気などさらさらなかった彼は一通り猫をからかったあげく「ニャーニャーうるさい」とばかりにサッシを閉めてしまったのである。気の毒な猫はしばらくガラス戸の向こうをウロウロした後、塀の向こうに姿を消した。消して、その後二三日姿が見えない。どうやら振られてしまった模様である。という話を当事者の友人に話したところゲラゲラ笑うばかり。友人は選んだ方がよいとは言うが。

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