カンパネラの町並みに関する議論の個人的総括

 先日の「カンパネラの町並みがおかしい件」について、各所で反響を頂戴しました。ありがとうございます。


 


 さて、身内同士での会話であればこの手の話題も茶飲み話で済むのですが、ここまで広く展開してしまうと、作品のファンの方々、そして制作の方々にとって、無神経な茶々を入れたような形になってしまいかねません。
 言い訳じみてしまいますが、いわゆる「洋風ファンタジー」一般において見かける町並みへの個人的な違和感を、『カンパネラ』を引き合いにして説明したことをここに再度お断りし、ご不興を蒙られた方々にお詫びしたいと思います。


 その上で、一連の議論の中で得られた知見や視野についてまとめることは、ともすれば不毛な罵り合いになるこの手の無粋なツッコミを、幾らかでも建設的な方向に向ける効果を持つかもしれず、発端の義務を果たすべく(笑)、ここに整頓してみましょう。

 カンパネラの町並みがおかしい件 http://d.hatena.ne.jp/hajic/20100827/p1
 カンパネラの町並みがおかしい件の続き http://togetter.com/li/45183
 ARIAのリアリティと嘘くさい街 http://togetter.com/li/45202


 当初のエントリーにおける僕の批判点を整理すると、「道幅のわりに建造物が低層である」こと、そして「建造物のデザインがバラバラである」ことです。批判の根拠は、「イタリアあるいは西欧的文化圏」の実際の街(歴史的エリア)との比較でした。


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 たくさん頂戴した、「ファンタジー都市でありイタリアではない」という指摘は至極まっとうなもので、ことさらに反論するべき理由はありません。洋食屋に入ったからといってお箸を使ってはならない理由もないわけです。

 一方で、「一連の町並みにはちゃんと理由があるのだ」とする指摘もありました。大きく分けると、作品の世界観的な根拠、そして制作(コスト)上の理由に基づく根拠、の二点になります。

 『祝福のカンパネラ』の街並みには根拠があるから疑問もある
 http://d.hatena.ne.jp/Thsc/20100830/p2

 Thsc氏のサイトでは、僕の批判のそれぞれに触れた上で、上述の指摘の双方への批判が行われています。
 「筋が通っている点があるからこそ理不尽な点が目につく」、しかし「日本的空間+西洋風オブジェクト方式は制作サイドの負担を軽減するため有効」という主張。なかなかに興味深いものでした。

 カンパネラの町並みはリアルでなくてもいい気が
 http://d.hatena.ne.jp/thvenr/20100828/p3

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 これじゃちょっと陰気くさい。

 シンヴェニア氏の指摘は、「建造物の高さを実際の西欧の町並みに準拠すれば、街は薄暗くなってしまい作中の雰囲気に合わないであろう」というもので、これも尤もなご意見です。
 ただし、十分に幅を取った街路であれば、建造物の高さは日照に問題を与えず、町並みに彩りと華やかさ、そして荘厳感を与えるのではないでしょうか。

 ゴーレムより愛を込めて――『祝福のカンパネラ』について
 http://d.hatena.ne.jp/episode_zero/20100827/p1

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 こんな『ARIA』は見たくない。

 episode_zero氏には「アニメの街並は奇形化していくべきであって、現実の風景に無理やり合わせる必要などない」という視点から、このような批判は的外れであり無粋だ、とする反論を寄せていただきました。
 確かにアニメが現実の翻訳である以上、「ディフォルメ」なのか「デフォルメ」なのかの議論は不毛に過ぎます。もし問われるとすれば、その翻訳を選ぶ理由だけでしょう。

 独り言以外の何か
 http://d.hatena.ne.jp/Su-37/20100829/1283078964

 氏のページでは、当初のエントリーに続くtwitterでの議論も踏まえて、街の平和な造りは「作中人物の活躍によるもの」という冗談めかしたご指摘。無粋なツッコミを上手にあしらう手際に、筆者の人柄が偲ばれます。
 が、リンク先を見たら物騒なことが書いてありますぞ:(;゙゚'ω゚'):

 カンパネラの町並みがおかしい件
 http://gnews.x0.com/20100828_192954/

 自動ニュース作成Gというサイトでは、これらの議論を包括する様々な意見が見られます。まさかここまで熱い議論になるとは思いませんでした。おそらく、皆さんにも、以前からなにがしか思うところがあったのではないでしょうか。
 今後、アニメやゲームが手に取られる際、背景へのこだわりにも注目が集まれば、きっと制作サイドの方々にとっても、腕の振るい甲斐のあるものと思います。


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 時にはハッタリもだいじ

 いずれにせよ、十分にリソースを投入された背景は、作品により強固なリアリティ、あるいはもっと素敵な幻想を与えることでしょう。制作現場にいっそう潤沢な予算と時間が提供されることを祈ってなりません。微力ながら、僕もDVD等の購入に励もうと思います。


おまけ:
 @genoishiさんから、三角屋根の資料を頂戴しました。必ずしもあの手の建物の背は高くなければならないわけではない、という証拠にもなるかと思います。感謝。
 

 デルフト http://picasaweb.google.co.jp/genoishi/Delft#
 ハールレム http://picasaweb.google.co.jp/genoishi/Haarlem#
 ローテンブルク http://bit.ly/avzXYM
 バンベルク http://bit.ly/bdeGRs


おまけ2:
 @gigirさんの建設的?な提言
 
 しかし、kfujiiさんのこういう指摘もあり、ままならない・・・。