Avvento: waiting for Natale
冬の日差しは、強くもなく、弱くもなかった。窓辺に置いてある鉢植えから、ローズマリーの香りが風に乗って漂ってくる。そんな陽気な午後のひとときを、クリスからの手紙で過ごしている。
本当に綺麗な、青い空だった。この空は繋がっているはずなのに、クリスの元では、雨が降り続いているという。信じられないような話だったけど、それは真実だった。いくらここに雨が降っていなくても、それは変わることはない。それが、私とクリスとの距離だ。——遠い。本当に遠くなってしまった。この距離を縮めることはもうできないのかと、何度も何度も考えた。私は私なりに、がんばってもいる。でも、足りないんだろうか? 学院を無事卒業したら、クリスは戻ってきてくれるんだろうか。この青空の下に。つまりは、私の元に。
1週間前に降った雨はたったの1日で止んでしまい、今ではもう、その名残すら感じられなかった。窓から差し込む日の光は眩しすぎて、思わず目を閉じたくなってしまう。だから手紙にも書いた通り、雨の日は少しだけ嬉しい。クリスの感じている、雨を感じることができるから。クリスのことを、近くに感じられるから。でも雨はいつでもすぐに止んでしまって、やっぱりクリスとの距離を思い知らされることになる。だから私は、雨を待ち望んでいる。この、雨の降る街で。
だから私は、その日が来るのが怖いのだ。——雨が降り続けば良いのに。嘘が本当になってしまえば。この世界が、私のついた嘘のように、優しくなってしまえば良いのに。そんなことばかり、考えていた。階下から、名前を呼ばれた気がした。一応鏡の前に立って、髪を整える。下ろしていた髪を上げようかと思っていると、もう一度名前を呼ばれた。そんな細かいところまではどうせ見えないだろうと、私は鏡から目をそらし、そのまま下へ降りていった。

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