シンフォニック=レインの曲をピアノで弾いてみた

 ギャー。楽譜があれぅ。工画堂スタジオの傑作『シンフォニック=レイン』の使用曲、『空の向こうに』『I'm Always Close to You』『秘密』『涙がほおを流れても』のピアノメドレーですよ、メドレー。

 『空の向こうに』はOPテーマなんですが、作中で二度流れるんですな。舞台になる街「ピオーヴァ」はいつも雨雲が垂れ込めてるんですが、二度目になると雨はこう、心の中に降り始めるという。いやもう、”神を称える歌は唐突に始まった”って主人公がつぶやくシーンの通り、うん、なんと言う罪深さ、かくあれかし、と呻くしかない衝撃をぶち込んでくれます。

 『I'm Always Close to You』はダ・カーポと呼ばれるルートの最後に顕れる、あるいは、このゲーム最終シナリオのEDテーマです。こんな愛の囁きみたいなタイトルをしていて、その歌詞ときたら・・・いや、全く完全に愛の歌なんですよ。「愛してその人を得ることは最上である。 愛してその人を失うことは、その次によい」みたいな意味で。

 『秘密』は正ヒロイン(であると僕の強く主張するところの)わた春香さんトルティニタの挿入歌というかテーマ曲。姉の恋人に懸想する少女の秘めた想いが込められた・・・というかモロバレやんという情念の歌です。自縄自縛極まる子で、まあ、この作品の秘密を握ってる人間の一人というか、二人というか。「見分けがつかないのは、同じように見えるふたつのものの間にある差違なのだ」と言われて数百年。

 『涙がほおを流れても』は上のトルティニタの真ルート、アル・フィーネのEDテーマで、OPの『空の向こうに』と共通する旋律を持つ、まあ、正EDテーマだと思われます。この辺ややこしいので、それぞれプレイして解釈してみてください。とんでもない真相暴露の後、物語はあるべき形に収まるかと思いきや・・・。「どうして涙が出ないんだろう。悲しいのに、悲しいと思ってるのに」。


工画堂スタジオ シンフォニック=レイン 普及版

工画堂スタジオ シンフォニック=レイン 普及版

 街の名前、ピオーヴァ(Piova)って言葉の語源は明らかにされていませんが、もしもこれがイタリア語であるとするなら、piovere(雨が降る)の接続法現在、「きっと雨が降ってるんじゃないかな?」くらいの意味に。あるいはPio(慈しみ)がva(今、垂れる)・・・これはちょっと無理やりかも。

 待降節、クリスマスを待つ四週間から始まって、新年1月の末、渇ききった冬の、何でもないある朝に終わる物語。雨が降っているのかいないのか、よくわからない街の出来事です。すごく切ないんだ。でも鬱になったりはしませんよ。みんな優しいし、素直だし、雨だっていつまでも柔らかに降り続く。でも、雪にはならないんだなあ。そこは厳しい。

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 18禁じゃないPC美少女ゲームという、一体誰に売ろうとしたのかさっぱりわからないこのゲーム、実際売り上げはパッとしません。とは言え、その内容はある意味18禁で、読書好きの要求にもしっかり応えてくれるレベルです。声優陣も中原麻衣笠原弘子浅野真澄折笠富美子とえり抜きの実力派揃い。・・・一体誰に売ろうとしたのか(以下略。

 ともあれ、岡崎律子さんの楽曲を聞いたことがあって、それが好きだって人は多いでしょう。シンフォニックレインってゲームの使用曲は全曲彼女の歌で、つまり、その意味では彼女の歌を多重的に編成したリリカルオペラですから、岡崎さんのファンなら絶対気に入る作品です。お布施だと思って、一本いかがでしょうか。冬が好きになるかもしれませんよ。


さよなら ありがとう。
言えなかった言葉たちを奏でましょう
君のその背中に 祈りを込めて


シンフォニック=レイン回想 概論 考察 補足 総括 .