口コミ病院検索サイトQLife

 口コミ病院検索サイトQLife(キューライフ)は、2006年9月26日にスタートした、その名の通り病院選びのための口コミサイトで、特色として「ネガ口コミを完全拒絶する」というポリシーを掲げている。ネットでネガティブコメントを排除とかあり得ないだろJK・・・と考える人は多いらしく、やっぱりボロカスに言われることもあるようだ。

 それでも、断固ネガティブコメントを排除する理由として、以下の理由が挙げられている。

・専門知識ない生活者は、断片・表面的な情報しか得ていない可能性があり、判断も単眼的・短期的になっている可能性がある。
・「医療」の理想形は、死生観や病歴、経済状況、家族構成などにより人それぞれ異なる。厳しい指導を好む患者と嫌う患者、短時間診療を好む患者と嫌う患者、両方存在する。
・「ネガ」情報は、対象の医師だけでなく、通院患者や家族を不安に陥らせ、病状を悪化させ、人生を傷つける可能性がある。
・安易な治療の中断や、医療機関スイッチを誘発した場合に、甚大な影響をもたらす可能性がある。
・入院中や手術直前で、あったり、事実上当該医院のほかに選択肢がない患者も多い。それらの方々にとって、「ネガ」情報は、不安をかきたて、治療効果を下げる可能性も高く、またその家族をも傷つける可能性もある。
・医療に関する批判は、命にかかわる重大な内容であることも多いため、エスカレートしやすく、誹謗中傷にいたる危険性が高い。
・批判口コミを投稿する場としては、掲示板サイトなど他に充分に存在する。(当社はQLife以外のサイト、例えば掲示板サイトでの告発行為までも否定はしない)

 乱暴に要約すれば、「医療行為の良し悪しは素人判断できる程単純ではない」ということだろう。確かに、医療行為が高度に専門的な分野であることは誰もが疑わないだろう。何も知らないことに対してあれこれ口を挟めば、だいたい碌でもない結果になることは、経験則的に合意ができる事実でもある。

 だとしても、ネットの口コミ情報自体の需要、あるいは関心は、利用者側・医師側双方にとって高い。



(利用者側の大半が「医療機関についての口コミは有効」と回答しているのに対して、医師の回答で最も多いのが「どちらでもない」であるという事実はとても興味深い。これは憶測でしかないけれど、医師たちにとって、ネットのネガティブ口コミはしばしば「よく知らないのに勝手なことを・・・」というものなのではないだろうか。実際、彼らの多くが今後ネット上に医療行為関連の口コミは増えるであろうと回答しており、その重要性は理解しているものの、素直に喜べないという反応だと思われる)


 最近の流行として、自分の詳しくない情報を判断する際、結果的にひどく自己過信的になる人が多い気がする。社会問題にせよ、政治にせよ、経済にせよ、あるいは家事にせよ、子育てにせよ、それぞれの分野にプロは存在する。本来、知らないことに関しては慎ましくあるべきなのではないかと個人的には思う。情報が簡単に手に入るようになっても、それをどう処理するかについては、それなりの学習と経験が必要とされるはずなのに。

 正直に言って、ネガティブ口コミを排除することは良し悪しだろう。ただ、それが医師に対する尊敬につながり、また医療行為に対する医師の自負とプライドにつながるのであれば、この試みは十分に美しいと言えるのではないか。医師にせよ、教育者にせよ、政治家にせよ、先生と呼ばれる職業は、本来そのプライドで品質を保ってきた側面はあると思う。その名を僕らがせっせと地に落とした結果が現在の不信に満ちた社会なら、QLifeのこの挑戦は、こうした「先生批判精神」に反する、一種社会実験的な性格さえ持ち得るかもしれない。

[PR by ブログタイムズ]