時は、取り返すことが出来るのですか。

少なくともね、アザラシの生態観察の文章読んで、アザラシについての知識を増やすのは、現代文の授業じゃないわよね。
そこにあるのは素材でしょう。素材を通して、何を伝えたいのか。読むのはそのためだもの。

 <<時と人>>についてのプロットは三つ持っていた。まず書くつもりだったのが、『ターン』。次がこの『スキップ』である。実際の取り掛かりは逆になった。遅々として進まず、最初にお話をいただいてから、何と入学した小学生が卒業するだけの時間が経ち、その間にケン・グリムウッドの傑作『リプレイ』が出てしまった。となれば、題がつき過ぎる。しかし、いうまでもないことながら、命名は作者にとって必然のものである。『スキップ』は<<早送り>>であるとともに、主人公の、仮に歯を食いしばろうと、失われることのない軽やかな足取りに外ならない。動かせない。了とされたい。

スキップ (新潮文庫)

スキップ (新潮文庫)