Seasons of Love

 ニコマスを知っていて良かった
 
 ラ・ボエームは実はあまり甘い話ではない。あまり頭の良い話でもない。若者たちは自主的にとんまな選択を行い、しかるべくしてしかるべき結末に至る。日本人の美徳と通じ合うところは少ない。ただ一つ、どうしようもない感傷だけを別にして。登場人物はパリのボヘミアンたち、詩人、画家、音楽家、哲学者。豊かでもなく、生きることに真剣でもない青年たちは、それでも決して退屈しているわけではなかった。

 このMADは一面で、明らかに、DikePの春香への想いが綴られた作品ではあるけれど、また別の面では、全てのアイマスプレーヤーに強いシンパシーを与える概念を抱く。「まっすぐ」に辿り着く、終わりのない53週。不思議と切ない、愛しい、取り戻せない、とんまな時間。そして望むのであれば、それは現代日本に生きるボヘミアンたちの、ニコマスを巡るあらゆる人々のコーラスとしての顔さえ見せる。

 『Rent』がラ・ボエームを翻案したミュージカルであることを今日初めて知った。世界の片隅、ニコマスの街角に立って往来に視線を流すとき、そこではいつも何かしらに出会う。知ること、語ること、歌うこと、作ること、共に飲むこと、食べること・・・当たり前に見えて、当たり前ではなくなった喜び。心躍る雑踏と喧噪。この愛すべき季節! 僕らが今立ち会っている現象を表す適切な言葉が今日また一つ増えた。