8/1

九時過ぎに起床。読書をしているとルカはバンバラなんとかという、お盆のようなものでハンドボールのたぐいを打ち合うスポーツの会合の取材に行くのだと出て行った。
しばらくして「小腹が減っていたらこっちにくればいろいろ食べられる」と携帯に連絡があったので僕もいそいそと出かける。場所はカブリアーナの公民館、元領主の別宅、ナポレオン三世及びフランツヨーゼフも泊った由来ある建物。
庭に面した一階の広間では一同だいぶ出来上がっていてコッパだのブルスケッタだのをもりもりつまんでいる。どう見ても場違いな日本人も混じってもさもさ食べはじめる。
マントヴァ産サラミはやはりおいしいと感心したりカニコロッケみたいなしょうもないものはやはり日本の方がおいしいと思ったりしながら満腹になるまで居座った。
あとよくよく聞いてみるとスポーツ名はバンバラではなくタンブレッロらしかった。
屋敷の裏は急斜面の丘になっていて、さらに昔ゴンザーガ家のどなたかが住んでいたという古城がある。遠くガルダ湖をも見晴らす立地の立派な城塞なのだけれど不細工なことに例のナポレオンが「ここの城の石を建築に使ってよし」というお触れを出したせいで、まるで激戦でもあったかのようにぼろぼろの廃墟と化している。ナポレオンはろくなことをしない。
イタリアでも指折りの可愛い村というふれこみの群落、カステラーロにでかける。売りは村の背後にあるハート型の池である。
「結婚式なんかもよく行われる村で普通カップルで来る。今日は二人ともゲイという設定だ」とぶつぶつぼやくルカは美人の奥さん持ちだが子供はいない。まさか。
夜はルカの同僚でもある日刊新聞「マントヴァの声」誌記者のサブリナとビールを飲み、彼女と別れてルカの兄貴オスカルと四人ピザをつつく。
ピザ屋ピエーヴェはカブリアーナの町外れの元煉瓦工場跡で、名前は背後の丘の上にある教会に由来している。
ちなみにピエーヴェというのはそのまま町外れなんかにある小聖堂のことらしい。ルカとルチアはここで結婚式を挙げたという。光の柔らかに差し込む可愛い聖堂である。