天狗裁き

「そんな面白い顔して、どんな夢みてたん?」
揺り起こす妻。夢なんか見てない、いや見てた、の口喧嘩が高じて死ぬ死なないの騒ぎに。驚いて飛び込んだのは隣家の男、わけを聞いて「アホなことで喧嘩すんな。ところで俺になら話せるやろ」。見てないものは見てない、義兄弟の俺にも言えないのか絶交じゃ、ああやってみろ、騒ぎを聞きつけてやって来た大家「アホなことで喧嘩しないな、まあ親子も同然のわしにだったら話せるやろ」。だから見てないって言ってますがな、よし店立て食わせたる、おお出るとこ出よやないか。奉行所にまでやって来た二人に奉行「たかが隣家の男が見たる夢の話で…馬鹿馬鹿しい、しかしこの私にならば」。見てません、お上に逆らうつもりか縛り首じゃ、刑場の縄にブラーンとかかろうとした刹那、突風が吹いて気付けば高い梢の上。「奉行までも知りたがるとは人間とは愚かなもの、天狗はそのようなものは知りとうないが、話したいというなら聴いてやってもよい」いやいや本当に見てませんのや、天狗に逆らえば五体は八つ裂きにされ杉の梢につるされ、そんな殺生な誰か助けて
「ちょっとあんた、そんな面白い顔して、どんな夢みてたん?」