ケロロ軍曹とイタリア
夕方五時、バスの切符を買いに入った駅のBARで何気なくテレビを見たら、『ケロロ軍曹』がやっていた。ケロロニアがどうこうで、忍法濡れ戦の術がなんとかと吹き替えのイタリア語で話している。
ケロロ軍曹。らんまとかドラゴンボールとかのレベルではない。日本人でも見てない人の方が多いであろうケロロ軍曹である。日本のアニメの浸透圧の高さを実感せざるをえない。あのネタはイタリア人に分かるのだろうか。変な誤解をされていそうな気もする。今度訊いてみねばなるまい。
それはともかく、テレビ放映に限らず、YOUTUBEやP2Pソフトなどの普及で、海外へのアニメの伝播速度と範囲は格段に速く、広くなったように思う。海外のアニメサイト等では当たり前のようにwinnyで落とした最新テレビシリーズのビューが飛び交うし、あっという間に英語字幕のファンサブがYOUTUBEにアップされる。
手っ取り早く面白いのはやはり、YOUTUBEの視聴者コメント欄かもしれない。リアルタイムで、海外の人間の生の声が聞ける。大半が英語だが、案外スペイン語やフランス語なんていうのも混じっている。
「凄い」「可愛い」等のたわいないコメントがほとんどだが、日本の文化を余すところなく反映した、ANIMATIONではないアニメに、世界中の若者が興味を寄せているという事実は、ちょっと想像も出来ないくらいちょっとしたことではなかろうか。
時に「日本語勉強してるんだ」等というコメントを見ると、高校時代、マジック・ザ・ギャザリングのために英語を覚えたのを思い出す。考えてみれば僕の英語をいくらかでも改良してくれた最大の教材はマジックだった。
こんな風な形で、自然に日本語が世界に広がっていくことは、ある意味日本文化の理想型なのではないかと最近思う。とにかく自己主張の苦手な日本文化である。自らを語る言葉を持たない文化というのは西洋文明に対してとにかく本当に致命的なのだが、それをまさかアニメが代弁してくれると誰が思ったろう。
なんだか幸せな夕方だった。