KANON:声部2006

京アニが2クールを費やしてせっせと敷いてきた伏線。彼らは実に2クールを費やして、はっきり言ってつまらない、誰に向かって語りかけているのかさえ分からないような作品を生み出してきた。彼らならおそらく、もっともっと愉快な別の物語を作れたはずなのに、である。けれど、だからこそ、この当惑がまさに『KANON2006』という作品が歴史的なレベルで包含する伏線であると、僕は確信する。

KANON』とは、その主人公祐一が7年ぶりに雪の降る街に戻るところから始まる作品だった。それから7年、偶然ではありえない符合を与えられて始まった『KANON2006』。ならばそれは結局のところ、1999年にKANONを体験し、それから7年の月日を経てきた僕らLeaf/Key世代の各「祐一」に向け語られている作品に他ならない。7年前、ある出来事から逃げ出した僕らに、まっすぐ視線を合わせて。

つまり、これは京アニからの明白な挑戦である。7年の歳月の中、君たちはどのような答えをそれに与えたのか(あるいは逃げたことさえ忘れたままでいるのか)? 彼らは2クールのほとんどを費やして綿密に「おさらい」を行った。そしてこれから彼らなりの「回答」を見せてくれるだろう。その答えはおそらく、誰にとっても快いようなものではないはずだ。それが何故かは、言うまでもない。

デジタルノベルは偉大と言っていい歴史を、複数の流れを持ちながら駆け足で遂げてきた。京都アニメーションの『KANON2006』は、その歴史の一つの証人になってくれるだろう。『KANON』が放った奇跡。それはその内部のみならず、外部にも対位する作品たちを連ねて奏でられた奇跡の追復曲の第1声である。様々な悲喜劇をうちに秘めたその系譜は、今まさに歴史的なコーラスへ向けて進む。


参考:マブラブに思う2 http://d.hatena.ne.jp/hajic/20060305/p1