鳥取から帰る車の上で前陛下崩御のニュースを聞いたのは18年前の事になる。共産主義者のはずの父が次期元号について嬉しそうに推測を披露していたのが印象的だった。湾岸戦争ソ連解体、バブル崩壊、消費税導入、失われた十年。沢山のことがあって、日本は今身じろぎを始めているように思える。世情、何が悪くて何が良いのかはわからない。ただ18年前の僕が知らなかったことを今の僕は知っているし、18年前の僕が気付かなかった悩みを今の僕は持っている。「ああしておけば」は限りがないけれど、そのおかげで拾い上げた視点もあるだろう。それらをなるべく生かしながら、今後舵切りにより意識的になっていくしかないのだと思う。あるいはそれもまた、18年後から見れば、いつか夜の高速をひた走るカローラの後部座席に座っていた、あの少年の薄呆けた意識と変わらぬ明るさに過ぎないにしても。