愛、深き淵より

愛、深き淵より―筆をくわえて綴った生命の記録

体育教師として中学に赴任した著者は、体操の模範演技中に頸椎骨折、二ヶ月目にしてほぼ全身が不随となる…。この本はそんな彼が著した回顧録でしかないが、そんなものでしかないこの本の持つ何かはとても、あまりにも重い。例を挙げるまでもなく、わたしたちの日常はごくあっさりと失われうる。そして、それが起こるまで、今ここに無事生きていること自体が奇跡であること、その事実にわたしたちは気付かない。なに不自由なく、毎日ただ生きていけること。それは果たして幸せなことなのだろうか? もちろん幸せなはずだ。でも、それだけではない気がする。


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