彼女が言えなかった、想い

『いつでも微笑みを』

もういくね きりがないでしょう。もうここでいいから。
最後まで言えないことがあった。 でも
すべて告げるのがいつも良いとは限らないの
私は、ねえ、つよかった? いいえ いつも揺れていたのよ

疑問
・なぜアリエッタは死んだのに、フォーニが残ったのか。


答えは単純だ。
アルは死を受け入れた。フォーニは死を受け入れなかった。
ではなぜ、アルは死を受け入れられたのか。その答えは以下の問いから類推できる。

・なぜトルタはアルになれたのか?
トルタは本当にアルと同じだったから(完全に循環論法)。だから彼女はアルになれたし、フォーニになることができた。そうすれば、トルタがアルとして、手紙に書いていたことはすべて真実である。ならば、アルの本当の願い、彼女が「最後まで言えなかったこと」とは、アルの本当の願いとは。つまり。



「トルタとクリスがつき合うこと」



それはやはり、言ってはならないことだっただろう。だけど、いつかはわかるから。大丈夫、すべてわかるから。…アリエッタ。彼女は本当に、優しい姉。しかし、そんな彼女のなかにも、少しだけ、具体的に言えば14センチぶんくらい、「それは嫌だ」と思う自分がいた。だから、彼女は「いつも揺れていた」。でも、彼女は、素直に自分の死を受け止めた。残ったのは…

フォーニ。
アルは本当にトルタと幸せになって欲しかったから、死を素直に受け入れた。そこに残ったのは、死を受け入れなかった自分、彼女の中に少しだけあったココロ、フォーニ。それはだいたい14センチのサイズ、アリエッタの身長と比べると、つまり、彼女の中で、そのココロが占める割合は、1/10くらい。フォーニはアリエッタだけれど、アルの全体ではない。それは、アルのココロのごく一部だったから、そのままでは等身大になる=自分の願いを叶えることができなかった。
だから等身大になるには、フォーニを構成する想い=「クリスを独り占めしたい」という想いを増幅する必要があった。ゆえにフォーニはトルタに魔法をかけ続け、クリスとアンサンブルをし続け、やっと人間サイズの想い=トルタ=フォーニのサイズになった。実はフォーニエンドのアルは、トルタでもアルでもなかった。あれはもう、フォーニでしかない。あれはまさに、フォーニエンド。