大平健 『やさしさの精神病理』 岩波新書

ISBN:4004304091
近頃の「やさしさ」はかつてのやさしさ、すなわち人の心情を推しはかって共感し、一緒に泣いたり怒ったりするようなホットなそれとは異なる。相手の心情を推し測るには結局言葉を持ってするより他はないが、言葉は同時に相手を傷つけることにもなりかねない。またかつてのやさしさは相手の心を推し測り、自分の心と同調させることで共感の絆を生んでいたのだが、それがない分現在の「やさしさ」の絆は緩い。つまり、かつてのやさしさは絆が強い分その制約    . 絆し(ほだし)   .も大きく、「やさしさ」は絆が緩い分その「絆し」も弱いのである。絆は良いが絆しは鬱陶しい、ならばいっそのこと相手の心情には手を触れず、表層的な部分だけでのウォームな、生ぬるい関係を築こうとすることこそ最近の「やさしさ」なのだ。さてこの「やさしさ」は確かに大きな問題のない平穏な日々を過ごすには良いのだが、万一何か問題が起こると誰にも相談できないという危機的状況を生む。そういうわけで最近精神病院は大繁盛・・・
この本の主張が正しいのか否か、無粋で鈍でホット型の私にはよくわからない。ただ一つだけ思うのは、こんな本を読書感想課題図書に指定する高校はいかがなものか。要約するか「納得しました/納得いきません」と書く以外ないじゃない。家庭教師の身にもなってくれ。