ロウソクのすすめ

ForestHill

ネットに数多あるキャンプ系サイトの中で、意外と軽んじられているのがキャンドルランタンである。各サイトとも灯りに関する記事はほぼガスか電池式の紹介にとどまっていて、トラディショナルな炎の魅力満点のキャンドルランタンは「そう言えばこんなのもある」程度の扱いなのだ。これはいかにも勿体ない。この上なく素晴らしい灯りなのに。
念のために説明しておくと、キャンドルランタンとはつまりロウソクを利用した灯りである。ロウソク台を兼ねる底蓋、風よけのガラスのホヤ、そして上蓋からなるシンプルな構造をしていて非常に軽い。光源はただのロウソクなので、ガスやガソリン(英語にするとどっちもガスだが)式のランタンに比べると光量は圧倒的に貧弱だ。暗い。これで一週間も本を読んだりしたら、まず確実に目が悪くなる*1
とは言うものの、真っ暗な屋外ではロウソクの明るさもなかなか馬鹿にしたものではない。夜食作りと日記付けくらいは十分にこなせる。そもそもわざわざキャンプサイトで本を読むようなまねは斎藤純愛読者以外あまりしないので、この程度の明るさがあれば十分だ。なにより、ロウソクの仄かな灯りというものには得も言われぬ情緒があって一度使えばやみつき間違いなしである。騙されたと思って、荷物のすみにでも投げ込んでおくと良い。
さて数社から発売されているアウトドアユースのキャンドルランタンだが、私が推薦したいのはForestHill社の製品である。定番商品の中では最もシンプルかつ軽量、廉価な商品ではあるのだがおそらくこれが最も高性能だ。と言うのも、いくら外装に凝ったところで結局中身はロウソクであって明るさは変わらない。ならば軽くてシンプルなものが一番である。実際UCOのランタンは複雑な構造*2が災いして、しばしばロウのオーバーフローを起こす欠陥品だった。
ともあれキャンドルランタンは、キャンプサイトでのライダーの必要最低限の要求を満たす、最も優れた光源の一つ*3である。電池式のライトには連続使用時間で勝り、ガス式のランタンには簡便性とコストパフォーマンス*4で勝り、ガソリンランタンには収納性で勝る。そしてなによりも、この小さな自然の炎があるだけで、夜がぐっとまろやかになる。

*1:読めないことはない。

*2:金属製の円筒の中のロウソクを、先が燃えるに従ってバネ仕掛けで押し上げる仕組みなのだが、これがしょっちゅう溶けたロウをお漏らしして動作不良を起こす。ロウソク一本を一度に使い切れば良いのだが、9時間もつけっぱなしにするのは無駄すぎる。

*3:「夜ごとサイトを永続的に淡く照らす照明としてキャンドルランタンは優秀」程度の意味であって、ガスランタンを否定するわけではない。やはり多人数での談笑にはあの明るさが必要だ。また電池式のライト、特に最近ではLEDヘッドライトの重宝さは、もはや必須アイテムと言ってよいほど格別である。ガソリンランタンだけは未だに大きすぎてどうしようもない。

*4:ちょっとした衝撃で崩れるマントルは、ライダーにとってほぼ使い捨てアイテム。一個数十円のロウソクに対し、このマントルは一枚250円程度で売られているため、毎日使用するのは財布に厳しい。せいぜい数時間に250円も払うのであれば、焚き火でもした方がマシである。なお、金属製のマントルを使用することでマントルの交換頻度をぐっと落とした製品もあるが、少々暗いのと交換時のマントル費用が割高なのとでお薦めできない、らしい。