世界の新着動画に思う
「世界の新着動画」、楽しいですね。見てますか? ニコニコ動画の新サービスで、幾つかのジャンルの新着動画をランダムにどんどん再生していく生放送プログラム。アイマスは「東方」「VOCALOID」「政治」(なぜ政治?)に混じって放映されています。
重要なのは30秒ごとに視聴者アンケートが行われること。過半数のYes!を取れないとその時点で再生が打ち切られ、次の動画紹介に移ってしまう。複数ジャンルのファンの視線に晒されるため、誰が見ても興味を惹く動画であることが強く求められます。im@s MAD Survival Championshipのより間口が広い版とも言うべきでしょうか。
今や強くセクション化したそれぞれの分野のファンが他ジャンル動画に与える評価が辛口なのは勿論のこと、こんなコアなサービスを楽しむほどにニコニコ動画にどっぷり嵌ったユーザーは相当に目が肥えていて、自分のひいきジャンル動画でさえも厳しい評価を下します。
結果、「世界の新着動画」で全編再生される作品はごく少数となり、そうした作品たちには「世界の新着動画完走組」という名誉あるタグが与えられます。良質のエンターテイメントの認定とも言えるこのタグ巡りはとても楽しい。まず間違いなく楽しめます。
それはそうと、この「世界の新着動画」は、ニコマスに一つの指針を与えてくれるのではないでしょうか。固定化したニコマス視聴者たちが作者名で作品の良し悪しを決定する、あるいは視聴するか否かを決定する傾向を強めたため、制作側への新規参入の道は険しくなり、また作品の評価がただ制作者の有名無名に依ってしまっているのではないかという最前からの懸念に、このサービスは新しい風を吹き込んでくれている気がするのです。
いわゆるニコニコ御三家と呼ばれる東方・ボカロ・アイマス(政治はともかくとして)各ジャンルファンの視線に晒され、しかも評価されることは、ニコニコ普遍的なエンターテイメントであることの証明です。少なくとも各ジャンル内部での評価よりは。視聴数でもなければ作者名でもない評価基準として、「誰が見ても楽しい」というタイトルを提示してくれるもの、それが世界の新着動画というサービスのように思えます。
高画質で重たい作品はそれだけで蹴られがちであったり、後半の盛り上がりで魅せる作品には辛い仕組みだったりするものの、それらも含めてニコニコ動画的なエンターテイメントとは何かについて、「世界の新着動画を完走するか否か」という鮮明な基準が答えを出してくれる。これは良い意味でチャレンジングな状況であり、停滞した界隈にとっての希望であるかもしれません。
あるいは我々は評価基準を喪失したのではないか、そんな絶望さえ漂うデカダンスなニコマス界隈にとって、世界の新着動画のもたらしてくれたものは大きい。他ジャンルファンの生の声が、引き込む構成のアイデアが、そして素晴らしい動画への素朴で素直な賞賛の声が、そこにはあります。