僕とまっすぐと

音楽を通して僕らはいつも語り合っていたのだ。
  ——シンフォニック・レイン VERO "AL FINE"


    http://www.nicovideo.jp/watch/sm1556944


 「まっすぐ」。一度でもEDを見ればオーディションで通常使用可能になるボーナス曲。けれど真アイドルマスターに辿り着いた時、この歌は、明らかに違う曲として僕らの面前に現れる。ただ全員がコーラスしているだけなのに、聞き慣れたEDテーマは全く別の顔を見せる。

 プロデュースはいつも若干の淋しさを孕む。結果はどうあれ、アイドルたちとの関係はいつも一度きり。プロデュースに「次」はない。思い出は消えなくても、アイドルたちの記憶は消える。早い話、今の千早は前の千早とは違う。

 ほろ苦い割り切りにも慣れ、自在にランクSを叩き出せるようになった頃、この曲は突然やって来る。挿入されるのは各アイドルからの感謝の言葉である。ありがとうございました。ただそれだけ。
 それだけの言葉が別のものとして響く。合唱に僕らが重ねるのは、過ぎ去った日々の歌声である。ずっと感謝と別れの言葉を贈りたかった相手の、もう一度会いたかったアイドルたちの、歌声が聞こえる。
 いつも心に引っかかっている、数多の失敗ややり残し。記憶のすべてを許してくれるようなラストソング。このとき「まっすぐ」は、ED曲としての真の姿を現す。強烈なカタルシスがそこにある。

 実のところ、アイマスは辛いゲームだ。購入したはいいものの、投げ出してしまう人も多い。根気と割り切りが必要だし、何より時間がかかる。万人向けとは言いがたい。
 それでもアイマスの魅力に取り憑かれる人は後を絶たない。事実、アイマスについて毎日のように各所で解釈が進む。ニコマス2ch、blog。良いことも悪いことも含めて、思い出が重ねられていく。虚構と現実、過去と今を織り込みながら、この物語は広がり続ける。
 すべての過去の清算を行う「まっすぐ」は、アイマスへの紛う方無きレクイエムであり——同時に、未来への決意表明だった。すべての死者たちに感謝と告別を。続く明日のために、思い出と希望を。このあきれるくらいベストな選曲!
 盛り上がる僕を尻目に、主人公たるプロデューサーはさっさと次のアイドル候補生を捜しに出かけてしまう。カーテンコールは終わらず、春香さんのハッピーエンドは遠い。