思い出ぽろぽろ

 どうしているの? 今 新しい空の下で 思い出すのはそう いつだって君のことさ
                        ——『夢見る頃』 , 歌姫楽園

アイドルマスター Xbox 360 プラチナコレクション

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 志半ばで僕の手を離れていった子、必要に飲み込まれて過ごしてしまった時間。
今なら、どの子も簡単にランクSにできる。でも、あの頃の時間には戻れない。
彼女たちにも、出会えない。


 僕にとってのアイマスに、埋めがたい欠落を与えて去った三人のアイドル。

1stプレイ 僕とやよいの思い出
 何をして良いのか分からないので事務所の掃除だの商店街の挨拶回りなどさせる。
元気いっぱいなやよいがオーディションに負けて落ち込む姿はただただ哀れで、
正直πタッチどころではない。カニを持ってきてくれた。

2ndプレイ 僕と千早の思い出
 あこがれの蒼い鳥。僕を散々なじったり能なしだと蔑んだり暴虐の限りを尽くす。
しかし攻略サイトを参照した僕に隙はなかった。みごとランクBを突破。
「トップアイドルには至れませんでしたね」という最後の言葉によるトラウマを僕に贈る。

3rdプレイ 僕と春香さんの思い出
 本当は最初にプロデュースしたかったが、失敗をびびって回避。
ユニット補正もあり、千早の苦労が嘘のようにあっさりとランクAに辿り着く。
オンエアで転けない春香さんは、なんだかとても遠い人に思え、無性に寂しくなる。
今もどこかでアイドルをしているらしい。


 春香さんを最初に選ばなかったことを、すごく後悔している。これからアイマスを始める人は、何があっても一番好きなキャラクターを初プロデュースするべき。たとえ上手く行かなくても、最初の挫折は一生ものの思い出になる。今でも僕のなかでは千早は特別の立ち位置を占めているし、やよいが「クルミではないもの」を持ってきた時、思わずほろっと来た。

 アイマスはやるべきことをやらないとダメなゲームだけれど、それだけじゃないのが恐ろしい。全てのコミュを見尽くすことができないことも、一度のプレイでできることが予測できるのも、作業プレイゲームと呼ばれる所以だけれど、やっぱりそれだけじゃない。アイマスはシビアなゲームだ。いや、クリアするだけなら簡単。僕でさえ三周目で目標を達成している。でも、それだけじゃない。

 全てのアイドルをトップの座に立たせた時に流れる、変則のEDテーマ『まっすぐ』が、どれほど衝撃的かは、実際このゲームを遊んだ人にしか分からない。やり残したことはいつもたっぷりあって、取り戻せない。次はもっと上手くやろう、そう思うことができるだけ。アイマスは地味だけれど佳い作品だ。割と真摯に向き合う価値のある、奥行きのある時間を与えてくれる。